第44話:リー地方1
ラグとオーカスは湖を後にした。行き先はリー地方。
オーカスが昨夜ラグに説明したとおり旅は約二週間続き、その間、言葉数が少なく物事に無関心なラグの様子は相変わらずで、ラグの左耳にあるイヤーカフが鍵なのかどうか? そうだとしてもなぜラグが鍵を持っているのか? 事の真相を探るために、オーカスは旅をしながら静かな趣でラグの様子を注意深く観察していた。
ラグとオーカスは目立つ事を恐れ、小さな田舎町を選んで食料を調達しながら名も無き土地の東側を通り迂回して北を目指して移動していった。
リー地方に入ってからは農耕が盛んな土地というだけあって田や畑が目につくようになってきた。
オーカスは、歩みを進める地竜の上でバランスをとりながら地図を広げる。
「もうここはリー地方のようです」
ラグは田畑の先にある地平線を眺めながら言う。
「田や畑ばかりだ」
「古代文字で書かれた文献によると、賢者リーは再生と錬金の魔力により、何も無い大地からあらゆる物を創造する事ができたそうです。リー地方の農耕が盛んなのは、賢者リーの魔力が今も大地に残っているからだといわれています。戦争になる前は、ローラン国にも農作物を出荷をしていたんですよ」
オーカスは指をさす。
「地図によると、リー家の屋敷はここから更に北にあるので、あっちのようです」
地竜に行き先を指示して頭の向きを変える。
ラグはオーカスについて行きながら言う。
「畑、田んぼ、畑、田んぼ。似たような景色ばかりなのに、よく地図一枚で判るな」
オーカスはにこにこしながら言った。
「私もこの土地は初めてなので、リー家の屋敷にたどり着く自信はないんですよ」
「はあ!? お前、分かって進んでいるんじゃないのか。地図を持っているから分かって進んでいるもんだと思っていたぞ」
オーカスとラグのボケツッコミを、地竜は真面目な表情で聞いている。