第42話:湖の畔3
ラグは気がついた。気がつくといつも暗闇の中にいるのだが、今は既に目蓋に光を感じている。酒を飲まなくなってなん日経っただろうか。もう二日酔いで頭が痛む事もない。ラグは目を開けた。
ちょうど地平線に太陽が昇り湖面を照らしていて、湖面はダイヤを散りばめたようにキラキラと輝いている。
その輝きの中にオーカスは立っていた。オーカスは相変わらずきちんとした身形で湖面を眺めている。ラグが起き上がると、オーカスは振り返りラグに視線を移した。
「魔法通信でローラン城と連絡を取り、名も無き土地を迂回してリー地方へ向う事を伝えました。ローラン国は相変わらず平穏のようです。昨夜は、いつもより酷くうなされていたようですが、大丈夫ですか?」
ラグはオーカスの言葉を無視して、手早く身支度を終える。
オーカスは、なかなか心を開かないラグの態度を見て、ラグに気付かれないように小さな溜め息をついた。
ラグは黙々と動き、焚き火跡へ行き何かをするが、どうする事もできないのでオーカスを呼ぶ。
「おい。火をつけてくれないか。昨夜話したから分かってると思うが、俺は魔法が使えん」
「あ、朝食がまだでしたね。今火をつけますね」
オーカスはラグの隣に腰を下ろして、剣の魔法器を使って昨夜の燃え残りの木に火をつけた。
朝食は早朝にオーカスが雷の魔法を使って獲った魚。本当は昨夜のうちに魚を獲るつもりだったが、旅の疲れもありオーカスは早々に寝てしまったので、今朝は早めに起きて湖で魚を獲ってきたのだ。その時のラグはまだ眠っていたので、オーカスの今朝の行動には気づいていない。