第40話:コトック家12
前衛の魔法剣士がラーグを調べるが、体のどこにも魔法器が見当たらない。
「こいつは魔法器どころか何も持ってはいない。魔法使いは他にいるはずだ。探せ!」
「いいえ。間違いなく、その者から魔法が発動しています」
「なんだと!」
魔法剣士全員がラーグに注目した時、ラーグを包んでいた光が強い輝きに変わる。
「お前ら。全員、殺してやる!!」
ラーグの叫び声のあと、体を包む強い輝きは太陽光並みの高熱エネルギーとなって一瞬にして屋敷全体に広がった。
ラーグの目の前にいた魔法剣士の体に火がつき、見る見るうちに燃えて灰となって散ってゆく。他の魔法剣士も、その後ろで横たわっている妹の亡骸も灰になっていく。父も母も、ラーグの妻オフェーリアも。
オフェーリアの体が全て灰になり、炎の渦に舞い上がって散った頃、憎しみに身を任せていたラーグは我に返った。
炎は渦を巻いてラーグを囲み今もなお燃え盛っている。
ラーグは光り輝いている自分の体に気付く。魔力を注ぎ火に勢いをつけているのは自分なのだと。強大な魔力を操る爽快感に胸を躍らせ、殺戮と破壊はこんなにも楽しいものなのかと、心の底から湧き上がる悦楽をラーグは認めたくなくて必死に否定する。
「ダメだ。火を消せ! 消すんだ!」
左耳を押さえて鍵に訴えるが、火は衰えるどころか勢いを増すばかり。自分が今している恐ろしい惨劇を目の当たりにしてラーグは叫び続ける。
「消えろ。頼むから、消えてくれ!」