第39話:コトック家11
魔法剣士は床に座り込んでいるラーグを取り囲んだ。
「戦意は感じないが、油断はするな」
魔法剣士の一人がラーグの前に立つ。
「鍵はどこだ?」
ラーグは返事をしない。憔悴しきった表情を魔法剣士に向けるのみ。
魔法剣士はラーグの襟首を掴んで持ち上げる。
「おい。答えろ!」
ラーグは、その剣士の腕を掴んだ。
「お前たちも、サザーランド国の魔法剣士なのか?」
魔法剣士は、ラーグの無様な姿を見て笑う。
「だったらどうだというんだ? ローラン国の英雄ラーグ殿」
周りを囲んでいる魔法剣士もラーグを見て笑う。
ラーグの表情が怒りに変わった。
「なぜ妻を、家族を殺した? 戦争の恨みなら、元軍人である私に向ければいいだろ」
笑いは更に大きくなる。
「英雄殿は、勘違いをしておられる。戦争は鍵を得るためのもの。鍵が手に入るならコトック家の人間など、どうでもいい。大人しく我がサザーランド国王に鍵を捧げていれば多くの命を失わずに済んだのだ。貴殿の家族もな」
魔法剣士は剣をラーグに向けた。
「これで分かっただろ。さあ、大人しく鍵を渡せ!」
ラーグは立ち上がる。小刻みに震えるほど全身に力を入れて大きく息を吸い込んでから、体内で渦を巻いている怒りと悲しみと憎しみの全てを吐き出して叫んだ。
「殺してやる!」
同時に、ラーグの全身が淡く輝き出す。
後方にいる魔法剣士が言う。
「魔法が発動しています」
黒尽くめの魔法剣士は条件反射で身構える。剣についている魔法器も作動して剣が淡い光に包まれる。
「どこで魔法が発動している?」
「その者からです」
後方の魔法使いはラーグを示す。