表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
the keys  作者: 羽村奈留
35/158

第35話:コトック家7

 戦争はもう終わっているというのに、どうしてこんな事になってしまったのか。ラーグには訳が分からない。

「母上」

「……ラーグ」

 ラーグの呼びかけに、キリエラは弱々しい声で答えた。キリエラはまだ生きていたのだ。

 ラーグは泣きながらキリエラに駆け寄り、跪いてキリエラの腹に刺さった剣を抜こうとする。

「剣を抜いて止血します」

 キリエラはラーグの腕に触れる。

「ラーグ。もう剣を抜く必要はありません」

「何を言っているのです。治癒の魔法を施せば母上は助かります。今すぐ癒しの魔法使いを呼んで」

 キリエラは、助けを呼ぼうとするラーグの手を握る。

「私は、もう助かりません」

「母上。何を言うのです。そんな事はありません」

 ラーグは泣きじゃくる。

 キリエラは自分の左耳にあるイヤーカフに触れた。

「この耳にある鍵が、私の死を悟り、次なる継承者を求めているのです」

「イヤです。母上。死ぬなどと言わないで下さい」

 ラーグは首を横に振る。

「ラーグ。私の話を聞いて」

「イヤです。母上。イヤだ」

「ラーグ。母の言葉を聞くのです!」

 キリエラはコトックを統べる(おさ)として、訪れる母の死を拒絶するラーグに強く言った。

 ラーグはキリエラを凝視する。

 キリエラは手を伸ばしてラーグの頬を伝う涙に触れ、息子を諭すために頬を撫でながら言う。

「神々は、この地に降り立った時、何人かの賢者に鍵を託しました。その一人が私たちの祖先、灰色髪の賢者コトックです。あなたが知っているとおり、賢者コトックが住んでいたこの地の名前にもなっています。私たちコトックの名を持つ者は、代々その血を受け継ぎ、強大な魔力を操り、コトックの地に暮らす民を守ってきました。今度は、あなたがその責任を担うのです」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ