第33話:コトック家5
キリエラが座り込んでいる上の天井は抜け落ち、破片が床に散らばっている。
黒尽くめの剣士は突然天井から現れ、先にセーラを人質にとったため、キリエラは魔法防御も攻撃もできずに相手の剣を腹に受けてしまったのだ。
リビングにいる黒尽くめの剣士は全部で五人。掴んでいたセーラを投げ捨てると、五人全員が剣を構えた。五人の剣にある魔法器が作動し魔力を帯びて剣全体が淡く光る。
それを見たコトック卿の剣も淡い光を帯びる。
「おのれ魔法剣士! 許さぬ!」
その言葉と同時に、一斉に炎の帯と水流と稲妻と氷の刃がリビングの中を飛び交った。
コトック卿は最初に氷の魔法で盾を作り、攻撃魔法を防ぎながら突き進み、炎の魔法を使う魔法剣士をしとめる。次に稲妻を発動して水を使う魔法剣士を感電死させる。
ラーグは父コトック卿を背にして戦い、黒尽くめの魔法剣士が投げる稲妻を避け、濡れた床に流れる電流をもジャンプでかわして稲妻を投げる魔法剣士に駆け寄ると、胸の急所を刺して倒した。次の相手は氷使いの魔法剣士。刃となって飛んでくる氷の温度は低く、ヘタに触れれば自分の身も凍ってしまう。ラーグは氷使いと何回もすれ違い剣を打ち合わせ、氷魔法の影響を受けて自分の剣を凍らせながら戦う。
コトック卿は二人の間に割って入り、息子のラーグを庇って氷使いの刃を受けて弾き返した。
「ラーグ。大丈夫か?」
「まだ大丈夫です」
今のラーグは軍人だった頃と違い、数人と戦っただけで息を切らしている。
そして後方にいた五人目の魔法剣士、重力使いがラーグたちに重力魔法を投げて言う。
「コトック卿は、数少ない複数属性を使いこなす魔法剣士のようだが、その息子は全くと言っていいほど魔法が使えんようだ」
氷使いがコトック卿の火の魔法を跳ね返しながら言う。
「息子は、アルランドの英雄と聞いていたが、噂だけか」
戦いは既に三人を倒しているラーグたちが有利に見えていたが、急にコトック卿は床に片膝をつけた。重力魔法を受けてしまったのだ。
ラーグは、飛んでくる氷の刃を受け流しながらコトック卿を見る。
「父上!」
「来るな! ラーグ。お前も重力魔法に巻き込まれる」
ラーグの動きが早くなる。
「うおぉぉ!」
ラーグは、飛んでくる氷魔法を避けたり剣で受けたりしながら進み、氷の魔法使いの首を刺して倒した。