第31話:コトック家3
「父上。今のは?」
ラーグはグラスをテーブルの上に置く。
家族全員が硬直し、使用人が確認のためにリビングを出て行く。
コトック卿は口元を拭くと立ち上がって壁に掛けてあった剣を掴んだ。
「今の音はなんだ?」
コトック卿は使用人に聞くが、同じ部屋にいる使用人に分かるはずもなく、誰もが動揺していて答えられない。
「あなた」
「お前はどこかに隠れていなさい」
コトック卿は駆け寄るキリエラを遠ざける。
オフェーリアも剣を持っているラーグの腕に掴まる。
「ラーグ」
「オフェーリア。母上の所に」
オフェーリアがセーラと手を繋いでキリエラの所へ行ったのを見届けてから、ラーグは父コトック卿の隣に並んだ。
「父上。ここは私に任せて母上と共にいて下さい」
「何を言う。お前一人に任せねばならぬほど、私の剣の腕は衰えておらぬ」
コトック卿も軍人だった頃の記憶が蘇り、剣を持つ手に力が篭る。
その時、通路から誰かの悲鳴が聞こえた。
ラーグとコトック卿は、キリエラたちを残して、同時にリビングを出た。
通路はきな臭い煙が漂っている。左右を見て悲鳴の出所を探すと、右の通路の先で使用人が倒れている。
コトック卿とラーグは小走りで駆け寄る。
使用人は、うつ伏せになって倒れ、床には使用人の血が流れて広がっている。
コトック卿が倒れている使用人に呼びかけた。
「しっかりしろ。誰にやられた?」
使用人からの返事はない。
ラーグは使用人の首の脈に触れる。
「父上……」
ラーグは首を横に振って、コトック卿に使用人の絶命を伝えた。