第3話:ローラン国2
長老は、頭を抱えるローラン国王をもう一度呼ぶ。
「王様」
「だから分かっておると申したではないか」
「いえ、王様。考えが一つ浮かんだのです」
長老の進言でローラン国王の悩みは一時停止する。
「考えとはなんだ?」
背が曲がり小柄に見える長老は白髪交じりの口ひげを揺らしながら言った。
「名案か分かりませんが、国家間の争いの元となる鍵を、国外に出してはいかがでしょうか。戦いの場が国外になれば、今後の国の損害をかなり減らせると思いますが」
「なるほど」
ローラン国王は感心してから、頭に浮かんだ疑問を長老に言う。
「鍵を国外に出すのはよいが、誰が鍵を守護するのだ?」
「もちろん鍵の継承者です。ちょうど我が国の鍵の継承者は二人共軍人。一人はマジックナイトの称号を持ち、もう一人はアルランドの英雄。その二人を国外に出しても、そう易々と鍵を奪われやせんでしょう」
ローラン国王は椅子の肘掛けに手を置いて指を動かしながら考える。
「だが、ただ国外に出すだけでは鍵の継承一族が承諾せんだろう」
そう言われて長老は言葉を詰まらせた。まだ先の事は考えていなかったようだ。長老が継承者を国外に出す理由を考えていると、長老の半分の若さである執政官が口を開いた。
「継承者に秘宝を探させてはいかがですか?」
ローラン国王は執政官を指さす。
「おぉ、それだ。その考えでいこう」
王の喜びに長老が釘を刺すように言う。
「王よ。秘宝の所持はなりませぬぞ」
急に活気付いたローラン国王はオーバーアクションで長老に言う。
「所持はせぬ。秘宝の位置の把握をしておくだけだ。神々との古の契約を破るつもりはない」
「それならよいのですが」
言い切った王を見て、長老はとりあえず一息ついた。
だが、執政官の仕事はまだ続く。
「では、鍵の継承者の一人であるシーライト将軍を呼びまして、秘宝探しの命を与える事に致しましょう」
ローラン国王は王冠を頭につけ、円卓に手をついて立ち上がった。
「それは、余が直々に申し伝える。久し振りにシーライト将軍と話もしたいしな。シーライト将軍を謁見の間に呼び出せ」
執政官は王に頭を下げる。
「畏まりました。では、もう一人の鍵の継承者には、後日特命をもって伝えることに致します」
「うむ、そうしてくれ」
後ろで控えていた側近にマントを掛けられたローラン国王は、颯爽とした足取りで議事室をあとにした。