第26話:サザーランド南西2
野生の地竜は獰猛だが、卵から育てると地竜は人になついてペット同然になる。頭が良く主人の顔を覚え、馬のように騎乗したり、また力もあるため荷物を引かせたり積んだりもできる。ただし、ラグにとっては高価な生き物だったりする。
ラグは驚いてオーカスを見た。
「俺は地竜を買う金なんか持ってねえぞ」
オーカスは驚いているラグの顔を面白そうに眺めながら言う。
「私が持っていますから大丈夫です。必要経費ということで軍から支給されているんですよ。長旅になる事も考えて、この前倒した兵士からも頂いておりますし」
「頂いたって!? お前。それは強盗殺人だぞ」
先ほどまで朝陽を浴びて光明神からの祝福を受けていたオーカスの言葉とは思えない犯罪者的な発言に、ラグは更に驚いてオーカスを頭の天辺から足の爪先まで見てしまう。
オーカスは、ラグの動揺を楽しそうに見ながら自分の唇の前に指を立てて言った。
「ラグ殿。声が大きい。静かにして下さい。どの道、私たちは敵国の軍人で、見張りの兵士を殺して国境を越えたお尋ね者なんですから」
「お前は、なんて奴だ」
ラグはぼやきながらもオーカスに従う。
年下のオーカスが年上のラグを制する。オーカスが陸の二十一部隊の隊長を任されている理由がここにあるようだ。
ラグとオーカスは、地竜と食料を手に入れて、次の鍵の継承者がいる北の町を目指した。
オーカスは地竜に跨り揺られながら言う。
「今から向かうサザーランド国のリー地方には、癒しの魔力を秘めた鍵があります。ローラン王都の図書館で調べた古代の文献によると、癒しの鍵は指輪の形をしているようです」
ラグは地竜の背に乗り、林檎をかじりながらオーカスの話を聞いている。
「ふーん。で、その鍵の継承者に挨拶をしたあと、私は敵国ローランの兵士オーカスです。と言うつもりなのか?」
ラグは皮肉を込めて言うが、オーカスは真面目に答える。
「事と次第によっては、身分を明かさなければならないでしょうね」
「おい。バカ正直に返事をするな」