第20話:リクナの国境2
オーカスは、ラグの手の温もりを感じながら、剣の魔法器から手を放した。
「よくご存知ですね」
ラグは、オーカスの冷やかしに低い声で言う。
「うるせえ」
「もしかして、いろいろと調べて国境越えの準備はしたものの、このリクナの国境の壁が越えられなくて、酒浸りになっていたのですか?」
オーカスの言葉で、ラグはぐうの音も出なくなった。図星のようだ。
オーカスと視線を合わせにくくしているラグの素振りを見て、オーカスは勝ち誇った笑顔で言った。
「ラグ殿は、私より大柄な体格なのに、中味は子供なんですね」
「子供だとぉ」
こめかみに青筋を浮き上がらせたラグの頭と口を、オーカスは押さえて草の中に隠す。
「俺は二十一……、フガッ、フガッ」
「しっ。誰か来ます」
ラグは右拳を挙げて「俺は怒ってんだぞ!」ポーズでオーカスに押さえつけられて雑草の中にひれ伏す。近づいてくる何人かの足音が聞こえてきて、それを耳にしたラグは、敵にしろ味方にしろ見張りの兵士に見つかると後々面倒な事になると思い、地面に頬をつけながら硬直した。
来たのは数人の敵国の兵士だった。今まで見張りをしていた兵士と交代をする。
去って行く兵士を見ながらオーカスは言った。
「次の交代の兵士が来るまで時間がありますね。なら、魔法を使わずにあの兵士を倒して国境の壁を越えましょう」
オーカスがラグを見ると、ラグはまだ怒っていた。
「俺を子供だと言ったのを取り消せ!」
「フフフ。本当にラグ殿は……」
子供っぽいと言うと、またラグは怒るだろう。オーカスは、更に怒ったラグの表情を思い浮かべて小さく笑うと、見張りをしている敵国の兵士に向かって走り出した。
「おい。こら。急に走り出すな」
ラグもオーカスを追って走る。