第17話:リクナの酒場3
ラグは戻って席に座ろうとするが、オーカスが店の外でラグの名を呼んで騒ぐので、周囲の目はラグに向けられ、オーカスの声と周囲の目が鬱陶しくなったラグは仕方なく店の外に出た。
「いい加減にしろ。ガキみたいに騒ぐな!」
オーカスに怒鳴るが、オーカスは驚きもせずラグを見て愛想笑いをする始末。
結局、ラグは店の外にテーブルと椅子を持ち出して無言で椅子に座った。
オーカスは、にこにこ顔でラグの隣に座る。
「私のために、外にテーブルを出してくれるなんて、ラグ殿は口は悪いけど根は善い人なんですね」
ラグは仏頂面になっている。
娘が含み笑いをして酒と食事を運んで来た。オーカスと視線を交わしてから酒と食事をテーブルに置く。
「お待ちどうさまです」
ラグは無言で酒に手を伸ばす。
その酒をラグよりも早くオーカスが掴んだ。
「今日から酒はやめて下さい」
「はあ?」
ラグは声を裏返してテーブルに両手をつく。
オーカスは酒を娘に返した。
「酒ばかり飲んでいては体に悪いじゃないですか。この人にミルクを」
「畏まりました」
「おい女。勝手に返事をするな。酒を置いていけ。おい?」
娘は軽蔑の眼差しをラグに向けてから酒を店内に持って行ってしまった。
「くそっ。なんなんだ!?」
酒が飲めなくなったラグは拳でテーブルを叩く。
オーカスは、苛立って機嫌の悪いラグを怖がりもせず笑顔で見ている。
「面白がってんじゃねえ。お前のせいなんだぞ」
ラグは怒ってオーカスに言うが、オーカスは悪ぶれた様子もなくパンを手に取った。
「ラグ殿が鍵の継承者でないなら、私はまた当てを外したことになります」
パンを適当に割いて野菜やハムを挟みながら言う。
「次は、居所がつかめない鍵の継承者を探して彷徨うより、居所がはっきりとした鍵の継承者の所へ行こうと思います。敵国ですが」