第16話:リクナの酒場2
娘が去ってから、オーカスは椅子を動かしてラグの隣に座った。
「私は鍵の手がかりを探して」
無表情でオーカスの言葉を無視していたラグは表情を歪ませた。テーブルの下にあった手を持ち上げて、掌で思いっきりテーブルを叩いてオーカスの言葉を止めた。
「うるさい。俺は二日酔いで頭が痛いんだ」
そして、ラグは初めてオーカスの顔を見た。オーカスは青い瞳で茶髪を後ろでまとめて紐で一括りにしている。多分それなりの長髪なのだろう。まだ髭の剃り跡も無く、あどけなさが残る少年のようなオーカスの顔をまじまじと見る。
「お前。隊長って言ったよな?」
「はい。言いました」
「歳、いくつだ?」
「十七歳です。あの、私の歳が何か?」
「何かだと? 十七の未成年が酒場に来るな!」
ラグはオーカスの腕を掴む。立ち上がってオーカスを引っ張って連れて行く。
「来い!」
最初オーカスは逆らうが、力はラグのほうが強いようで、強引に引っ張られていく。
「私は酒を飲みに来たのではなく、任務で来ているのです。飲んだくれの貴殿と一緒にしないで下さい」
「なんでもいい。とにかくお前は店から出て行け!」
ラグは、オーカスを店の外へ放り出した。
オーカスは、ラグに押し出された勢いで前のめりになり転倒しそうになるが、腰を低くして地面に手をつき派手な転倒だけは辛うじて逃れる。オーカスは身を起こして手についた砂を払いながらラグに言った。
「昨日一緒に泊まった仲じゃないですか。それに私は食事もまだ摂っていません。食事だけでもさせて下さい。ラグ殿。お願いです。ラグ殿」