第156話:最終話3
ラグはオーカスを持ち上げて机に座らせてから、オーカスの頬や首にもキスをする。
「あの……。ラグ。ここ机です」
「イヤなのか?」
聞いてはいるが、オーカスの服のボタンを外しているラグは、断りの返事を聞く気は無いようだ。
「イヤというより、いいのかと思って」
「俺が座らせたんだ。いいに決まってるだろ」
ラグはまたオーカスと唇を重ね合せる。舌を絡ませながら、オーカスのズボンのチャックを下げて中に手を入れた。ラグの指は、オーカスの柔らかい茂みの中を探りながら奥へと入っていく。そして、指は硬いものにたどり着いた。ラグはオーカスとの行為に夢中で、最初のうちは硬いものがなんなのか分からず触っていたが、先端を弄り形を把握した瞬間、ラグはそれを握ったままオーカスの顔を見た。
「オーカス。お前……」
「ラグ。途中でやめないで下さい。お願い。もっと、して……」
オーカスは恍惚とした表情で足を開いて、ラグが来るのを待っている。
その時、急にノックも無くドアが開いた。
「ラグ。大変です」
オーカスが剣士の姿でドアから入って来る。
「え! オーカス!?」
ドアから入って来たオーカスと、机に座っているオーカス。一体これはどういう事だ? と、ラグが目を白黒させてドアのオーカスから机のオーカスに視点を移した時、いきなり赤い髪のニックの顔がドアップでラグの目に飛び込んだ。ラグは驚いて飛び退く。
「ニック!!」
ニックの胸のボタンは外され、褐色の胸には今しがたラグがつけたキスマークが至る所についている。その下のズボンはチャックが全開で、ニック自慢のブーメランパンツが露わになっており、ラグがよく知っている大きなものがブーメランパンツからはみ出していた。
ニックは濡れて艶だった唇を色っぽく動かして男性特有の低音ボイスで言った。
「ラグ。久し振り」
「あのオーカスは、お前の水の鍵魔法が作り出した幻なのか!?」
ニックの満足な表情がイエスと言っている。
ラグはショックを受けて我が目を覆うとするが、右手でニックのものを掴んでしまったのを思い出して、急遽変更して左手で我が目を覆った。右手がものの感触を覚えていて、ラグは自分のしでかした始末の愚かさに血の気が引き目眩を覚え、ふらつきながら手探りで歩いて最初に掴んだ来客用のソファーに崩れるようにして座り込んだ。
「私が悪かった。許してくれ。オフェーリア……」
ラグの頭の中は真っ白で何の打開策も思いつかない。真っ白な背景を背にラグをコトック卿として見つめて笑うオフェーリアがいるだけ。
「笑うか。オフェーリア。そうだろうな」
ソファーの上で廃人になりかけているラグの隣に、本物のオーカスは腰を下ろした。
「オフェーリアさんを思うラグの気持ちは分かりますが、どうか私を拒絶しないで下さい」
「お前を拒絶しているんじゃない。あのオーカスを拒絶しているんだ。いや、するべきだったんだ」
まだ数分しか経っていないのに、ラグは病人のようにやつれた表情になっている。
オーカスは、心配しながらラグの肩に手を置いてラグを揺する。
「何を訳の分からない事を言っているのです。お願いですから私の話を聞いて下さい。私の話を聞いて頂けるか心配だったので、ニックから話して頂くように頼んだのですが」
オーカスは、背にある仕事机の上に座っているニックに言う。
「今のラグは、酔っている時より悪い状態じゃないですか。ニック。きちんと説明をしてくれたのですか?」
ニックのズボンのチャックは既に上まであがり、ニックはベストのボタンをはめながら言う。
「もちろん。さっきまでのラグは、オーカスを拒絶するどころか、受け入れる気がかなりあるように思えたけどな」
「なら、このラグの状態はどういう事ですか?」
「それは俺にも分からない」
ニックは悪戯っぽく笑う。