第155話:最終話2
オーカスは魔法器がついた細身の剣を腰に提げ、初めて会った時と同じ、少年剣士の姿をしていた。
「オーカス。久し振りだな」
一年たった今も、ラグのオーカスへの思いは変わっていない。ラグは胸から溢れてくるオーカスへの思いを、オーカスに悟られないようにしながら静かな口調で言う。
「陸の二十一部隊の隊長の姿で来たという事は、公式の来賓ではないな。将軍として来れない何かが城であったのか?」
「あの……」
オーカスが執事を気にするので、ラグは手で合図を送り執事に書斎から出るように命じた。
執事は静かに書斎から出て行く。
ラグはドアが閉まってから、また静かな口調で言った。
「城で何があったんだ?」
「いえ、違うのです。その……」
オーカスはラグの顔を見ていたが、いざ説明する段階になって言葉が止まり、ラグから視線をはずした。
「私は、誕生日がきて十八歳になりました。だから……」
オーカスの言葉がまた止まる。
ラグは飛空艇で受けたオーカスの愛の告白が、またくるのかと予測して、断りの言葉を考える。1年以上も前に亡くなったとはいえ妻のオフェーリアを無下にできないからだ。考える猶予を得るためにオーカスの言葉を繰り返す。
「だから?」
「だから」
オーカスは顔を上げてラグを見つめる。やはり愛の告白かとラグが身構えた時、オーカスはラグに飛びついた。
「ラグ」
「ダメだ。俺にはオフェーリアが」
ラグは貴族の口調が消えてしまうほど動揺し、迫るオーカスから逃げようとする。
オーカスはラグを掴まえて強引にラグと唇を重ね合せた。オフェーリアの名前が出てくるラグの唇を塞ぐようにして唇を押しつける。後退りをするラグと離れないように、オーカスはラグの首に手を回して両手でラグの後頭部を掴んでラグの顔を引き寄せた。
ラグは抵抗してオーカスの腕を掴むが、オーカスの舌がラグの口の中に押し入った時、ラグの抵抗はなくなり、ラグは無意識にオーカスの背中に手を回して抱きしめた。
しばらくの間オーカスが主導権を握り、舌が絡み合ういやらしい音がする。
オーカスが思う存分キスをしてラグから離れると、ラグは口から吐息を漏らして自らの意思でまたオーカスを抱き寄せた。
「オーカス。どこでキスを覚えたんだ?」
「もしかして、嫉妬をしているのですか?」
ラグの心には、もうオーカスしかいない。
「そうらしい」
「私を振ったのは、ラグなのに」
「なら、今からその償いをしよう」
今度はラグのほうからオーカスにキスをする。
ラグに舌を絡めとられたオーカスはすぐに陥落した。オーカスの呼吸は早くなり、息苦しくなったオーカスは、口を離し吐息を混じらせながら言った。
「愛と誠実の火の鍵の継承者のキスって、こんなにも甘美で熱いのですね」
「途中でやめるな。嫌われたかと思ったぞ」
「すいません」