第151話:金髪のケルティック卿5
急に無口になったラグとオーカスに、ニックは水の鍵の継承者である金髪のケルティック卿として念を押すように言う。
「次期ローラン国王の選任もしなければならないし、いろいろと大変ですね。お二人とも。私にできることがあったら、いつでも援助させて頂きますので遠慮なく言って下さい」
オーカスからの返事はなく、オーカスの笑顔はそのまま凍りついて動かない。
ラグはアメシスト色の瞳で突き刺すような視線でニックを見据えて低い声で言った。
「水の鍵魔法を使いどんなに姿が変わっていても、火の鍵の継承者の俺に、水をさすお前は間違いなく水の鍵の継承者ニックだ」
不敵に微笑むニックに対し、ラグは今にも飛びかかりそうな怖い表情で睨んでいる。
オーカスは急いでラグとニックの間に入った。
「ニック。いえケルティック卿。我が国を気遣って頂き有難うございます。私はシーライト将軍としてローラン国のために尽力を注ぐ覚悟でおりますので、私からのお願い事がある時はどうか宜しくお願いします」
オーカスはシーライト将軍として、ケルティック卿であるニックに頭を下げた。
「それでは巨大飛空艇の中を視察したいので案内をして頂けますか?」
ニックはオーカスの震える唇を見て言った。
「今のあなたに、この話は早過ぎたようですね。心配しなくても大丈夫です。私たち鍵の継承者は、気付かないうちに体内のナノマシーンでお互いの連絡を取り合っていますから、私たちが完全に離れ離れになってしまうことはありませんよ」
心配している事はそうじゃないと思いながら、オーカスは隊長として、将軍として本当の思いを心の奥底に仕舞って言う。
「それはよかった。ケルティック卿もサザーランドの国が落ち着いたらローラン国に遊びに来て下さいね」
「はい。その時が来たら喜んで伺わせて頂きます」
オーカスはラグの所に行き、自分より背の高いラグをアクアマリン色の瞳で見上げて言った。
「そろそろラグも機嫌を直して下さい」
ラグのしかめっ面が直らないので、オーカスはラグの両頬をつまんで引っ張る。
「ラグは、いつまでたっても子供みたいなんだから。さあ、巨大飛空艇の中へ行きますよ。仕事。仕事」
ラグはオーカスに手を引かれながら言う。
「俺は子供じゃねえ」
ニックは陰で笑う。
ラグはすぐ気付いた。
「ニック。今笑っただろ?」
ニックは紳士のケルティック卿として返事をする。
「いいえ。笑っていません」
「いや。絶対に笑った」
「笑ってないって」
ラグが追及するので、ガイドのニックに戻ってしまう。
旅をしていた時となんら変わりのないラグとニックに、オーカスは喜びつつもローラン国の将軍として言う。
「二人とも、ちゃんと国の要人として仕事をして下さいね」
巨大飛空艇に搭乗する三人の楽しそうな声が響く。
巨大飛空艇の視察は、三人の破茶目茶トリオで行われ、その間ラグの操は幾度となくニックに狙われ、その都度オーカスに二人は叱られ、オーカスの監視により何とか無事に巨大飛空艇の視察は終了した。