第15話:リクナの酒場1
気がつくとラグは暗闇の中にいた。
カーテンを開ける音がする。
ラグは目蓋に光を感じて目を開けた。音がしたほうを見ると、窓際に人が立っていて外を見ている。窓から入ってくる光が眩しくて、誰なのかよく見えないが、腰には剣があり剣士というのだけは分かる。
ラグが起き上がると、窓際にいる者が振り返りラグを見た。
「うなされていたようですが?」
昨日、ラグの剣を止めた剣士のようだ。ラグは思い出して、これ以上関わり合いたくないと思い、相手の声を無視する。ベッドから降りて立て掛けてあった剣を腰に挿した。
剣士はどこかへ行こうとするラグに歩み寄る。
「ラーグ殿。私は」
ラグは、腰に挿した剣の位置を直しながら言う。
「俺はラグだ」
それだけ言ってラグは部屋を出た。
剣士は、ラグを追って部屋を出る。
「失礼しました。ラグ殿。私は、シーライト軍、陸の二十一部隊、隊長のオーカスと申します」
ラグは、オーカスの言葉を無視して階段を下りながら大きな欠伸をする。
オーカスは小走りでラグの横について、ラグと一緒に階段を降りる。横について歩くオーカスは、ラグより小柄で背が低い。
「シーライト将軍の命により、鍵の継承者の護衛をするため、コトックの地へ赴いたのですが、コトック家の屋敷は全て焼け落ちて跡形もなく」
ラグはまたオーカスの言葉を無視する。階段を降り切ってから、一階にある酒場のテーブルを陣取り、店内を歩いている娘に言った。
「おい。酒」
娘はトレーにあった料理を客に配ってから振り向く。
「またですか? 少しは食べないと」
「酒でいい」
「はぁい」
娘はイヤそうに返事をするが、オーカスと目が合うと笑顔になり声の調子も弾んでトーンが高くなる。
「お食事をされますか?」
「ああ。パンに合う物を。あとミルク」
「畏まりました」