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the keys  作者: 羽村奈留
149/158

第149話:金髪のケルティック卿3

 ケルティック卿はラグの腕に触れて言葉を続ける。

「ニックは、コトック卿の熱き思いに触れてしまったがために、あなたを愛してしまったのでしょう」

 ラグの動きが止まる。ラグは体を光らせながらケルティック卿を見た。

「ケルティック卿?」

 ケルティック卿はハンサムな顔立ちで、迷える子羊となったラグに、教会の牧師のような表情をして導きの言葉を告げる。

「ニック。愛してる。と言えば、それだけでニックはとても満足すると思いますよ」

 ラグの体から光が消えた。ラグはケルティック卿のエメラルド色の瞳を見つめて、唇をゆっくりと動かした。

「ニック。愛……して……る」

 最後の「る」を発音した時、ラグの唇はキスを求めるように開きかけた薔薇の蕾となって、ケルティック卿に向けられた。

 ケルティック卿は、急に表情を変えてラグに飛びついた。

「ああ。ラグ。私もラグを愛してます」

 ラグは飛び付いて来たケルティック卿の顔面を片手で受け止めた。

「と言って、俺がお前に愛を捧げると思ったか? ニック!」

「あともう少しだったのに、どうして気付くんですか?」

「水の鍵魔法を使い、変装したって、行動がニックそのものでは、ばれるのは当然だろ。その程度の変装で俺が騙せると思ったか。考えが甘いぞ」

「巨大飛空艇が崩壊した時、キスをくれてやればよかったと言っていたそうじゃないですか」

 姿形はハンサムな金髪のケルティック卿。今の言葉使いも紳士のケルティック卿。だが行動そのものは変態ニック。ニックはケルティック卿の姿のまま、ラグを抱きしめようとするが、手が背中まで届かず、ラグの頬に触れるのが精一杯で、とりあえずラグの頬に両手をそえてキスをしようと唇を尖らせる。

 ラグは迫ってくるニックの顔を両手で押し返した。

「俺からのキスは、お前が死んでいたらの話だ。……て言うか、貴様、俺の話を聞いていないだろ」

 そんなラグとニックに、オーカスは両手を広げて飛びついた。

「ニック。生きていたのですね」

 ニックはラグから手を放してオーカスに抱きついた。

「オーカス。ちょっと見ないうちに女らしくなったね。もしかして薄化粧をしているのか?」

 口調がガイドのニックになっている。

「はい。少しだけ。もうみんなの前で女を隠す必要がなくなったので」

「そうか。俺は綺麗になったオーカスに会えて嬉しいよ」

 ラグの目には、愛おしそうにオーカスを抱き締める金髪のケルティック卿の姿が映っている。

「オーカスに抱きつくな!」

 怒りまくるラグを尻目に、ニックはオーカスの頭を撫でた。

 オーカスはニックを見上げて、出会えた嬉しさを全身いっぱいに表して言う。

「どうやって墜落する巨大飛空艇から脱出したのですか?」

 ニックは周囲の視線を気にして咳払いをしてから、ケルティック卿として答えた。

「脱出は、できなかったのです」

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