第148話:金髪のケルティック卿2
ラグより背が高いケルティック卿は、ラグの背中を軽く叩いて慰めながら言う。
「コトック卿。巨大飛空艇に残ったのは、彼自身が考え望んだ事です。彼もサザーランド国王とあなたたちを助ける事ができて満足だったと思います」
オーカスはケルティック卿に聞く。
「あの、ニッ、ニコラス殿のご遺体は見つかったのでしょうか?」
「いえ。まだ見つかっておりません。肉片はいくつも見つかっているのですが、どの肉片が誰のものなのか、ケルティック家の医術を使い調べているところです」
「水の鍵は?」
「水の鍵も見つかっておりません」
「そうですか」
オーカスは悲しそうな表情をする。
ケルティック卿は、目の前にそびえ立っている巨大飛空艇を見上げて言った。
「鍵もナノマシーンの集合体で形成されているので、自己修復の過程で巨大飛空艇のナノマシーンとして吸収された可能性があります」
オーカスも巨大飛空艇を見ながら言う。
「私たちの体内にもナノマシーンがあると聞きました。ニコラス殿も水の鍵と一緒に巨大飛空艇に吸収されたのかもしれませんね」
「その可能性も考えられますね」
ケルティック卿は巨大飛空艇の搭乗口に入って行く。
オーカスも続いて中に入るが、ラグは飛空艇の外壁に手を突いた。
「ラーグ殿?」
オーカスがついてこないラグを呼ぶ。
ラグは外壁に向かって立ち、外壁に話しかけている。
「俺にはナノマシーンのプログラムを無条件で変更する絶対権限がある」
オーカスはラグに駆け寄る。
「ラーグ殿。どうしたのですか?」
ラグは鍵の魔力を発動させ体を淡く輝かせて巨大飛空艇のシステムにアクセスしながら言う。
「ニック。もし巨大飛空艇に吸収されたのなら、巨大飛空艇から分離して姿を現してくれ」
「ラーグ殿。いくらなんでも、それは無理です。絶対権限を持つあなたでも、巨大飛空艇のシステムプログラムを変更する事はできません。報告書にありました。鍵と巨大飛空艇はナノマシーンで形成されていますが、プログラムは全く別物だと」
オーカスはラグの隣に立って説明をするが、それでもラグは巨大飛空艇の外壁に手をついて鍵の魔力を使いアクセスを続ける。
「頼むから姿を現してくれ。ニック」
「ラーグ殿。私の話を聞いて下さい。研究員の話によると、巨大飛空艇は私たち鍵の継承者の絶対権限を受け付けないように作られているのです」
オーカスは、ラグと一緒に旅をし傍でラグを見てきたからこそ、ラグにとって仲間を失う事がどれほど辛い事なのか知っている。出会った頃のラグとの違いは、今のラグはオーカスの前で苦しいと素直に表現するようになった事だ。
「ニック。巨大飛空艇と共にいるなら出てきてくれ。俺のために」
ケルティック卿がラグに近づく。
「コトック卿は、愛と誠実の象徴である火の鍵の継承者に相応しく、熱き思いをお持ちなのですね」