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the keys  作者: 羽村奈留
144/158

第144話:ローラン国王14

 ニックは皆を先導する。

「さあ、早くサザーランドの飛空艇に戻らないと」

 ラグたちはサザーランド国王と共に走り、巨大飛空艇に横付けされていたサザーランド国の国旗を掲げた飛空艇に無事に搭乗した。

 オーカスはラグに言う。

「墜落する前に飛空艇に戻れてよかったですね」

「ああ」

 ラグが返事をした直後に、巨大飛空艇は降下を始めた。

 ラグたちは飛空艇の窓から落ちていく巨大飛空艇を見た。地面に叩きつけられ壊れていく巨大飛空艇は、飛空艇団の光線に耐えたと思えないほど脆い崩れようだった。崩れていく回りで土煙が上がる。

 ラグはポツリと言った。

「神々が作ったもんでも、最後は呆気ないな」

「そうですね」

 オーカスも同感だと頷くが、声が一人足りない事に気付いて周囲を見た。

 ラグが聞く。

「どうした、オーカス?」

「ニックの声がしないので」

「そういえば、そうだな」

 ラグもニックを探す。

 ニックはすぐに見つかった。サザーランド兵士に混じって立っているが、蝋人形のように全く動かない。

 オーカスが歩み寄る。

「ニック?」

 よく見ればニックの姿が半透明に透き通っている。

 オーカスは急いでラグを呼ぶ。

「ラグ。ニックの様子が変です」

 オーカスの声でラグが駆け寄り、サザーランド国王や兵士たちがニックに注目した。

 オーカスの言うとおり、ニックの体は透き通り、たまに波紋が起こり揺らいだりしている。

 ラグはニックの肩を掴んだ。

「ニック。どうしたんだ?」

 その瞬間、ニックの体はただの水と化し、落ちて水溜まりとなって床に広がった。

 ラグは雫がかかった自分のブーツを見て息を飲む。

 オーカスは水溜まりに向かって何度もニックの名を呼ぶ。

 ラグはオーカスほど取り乱さず黙って水溜まりを見つめた。そして、落ち着くようにとオーカスの肩を掴んだ。

「ニックは、ワザと巨大飛空艇に残ったんだ」

「そんなはずは。だって私たちと一緒に逃げて」

 言い掛けて、オーカスはニックの姿がダブって見えた時の事を思い出した。

「もしかして、あの時に……。ニックはシステムの状況を調べた時にすぐ墜落する事を察知して、私たちがサザーランドの飛空艇にたどり着くまで、墜落寸前の巨大飛空艇を維持しようと、鍵の水魔法を使って」

 オーカスは泣き声になりながらも言葉を続ける。

「もう一人の自分を作り、本体はシステム維持のために残り幻術で身を隠して……。ニックは巨大飛空艇と一緒に落ちて……」

 ラグは、泣いて言葉が続かなくなったオーカスの肩を抱く。

「もういい。もういいから。な、オーカス」

「ラグ……」

「こんな事なら、ニックにキスの一つでもくれてやればよかった」

 ラグの言葉を聞いてオーカスはラグの胸にすがりついて声をあげて泣き出した。

 サザーランド国王は静かに言った。

「きっとケルティック卿の体内にあるナノマシーンのプログラムが起動し、プログラマーの血を受け継ぐ余を守れと、賢者ケルティックがニックに伝えたのじゃろう」

 サザーランド国王はオーカスの泣き声を聞きながら悲しみの表情を浮かべた。

「神々も惨いプログラムを作りおる」

 巨大飛空艇は、サザーランドとローランの両国の兵士が見守る中、完全に崩壊し粉々に崩れ去った。

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