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the keys  作者: 羽村奈留
142/158

第142話:ローラン国王12

 ラグは壁に手をついて言った。

「今度はなんだ?」

 オーカスもバランスを取りながら言う。

「壁に映し出されていないので分かりません」

 ニックもよろめきながら言う。

「壁の飛空艇が動いていない。下にいる兵士も動いていないぞ。ひょっとしてこの壁のシステムが壊れたとか?」

 ラグとオーカスは同時に言う。

「なぜ壊れるんだ?」

「どうしてですか?」

「壁に聞くなよ」

 ニックが低い声でツッコミを入れていると、その壁に光が走り半円を描いてからトンネル型となった壁が音を立てて倒れた。

 開通したトンネルを通りサザーランド国の兵士が次々と中に入ってくる。

 ラグとオーカスが身構えると、ニックが言った。

「大丈夫。あの人たちは全員俺の知り合いだから」

 オーカスが理解できないといった表情をする。

「あの兵士全員が知り合いなのですか!?」

 ラグは警戒を解く。

「そういえば、ニックは王宮住まいのケルティック家の人間だったな」

「放蕩息子の俺は、住んでいないけどね」

 ニックは今も床で呻いているローラン国王を見ている。

 サザーランドの兵士がニックの水魔法で苦しむローラン国王を拘束した頃、サザーランド国王がトンネルを通り中に入って来た。

 60歳前後のローラン国王と比べると、40歳前後に見えるサザーランド国王はとても若く見える。

 ニックは条件反射でサザーランド国王の前で床に片膝をついて赤い髪の(こうべ)を垂れた。

「直々のお越し、痛み入ります」

「うむ」

 サザーランド国王はニックを見てからローラン国王を見る。

「久し振りよのう。ローラン国王」

 ローラン国王は苦しんでいて返事ができない。

 サザーランド国王は考える。

「いかがしたのじゃ? ローラン国王よ? さては――。ケルティック卿。水の鍵の魔法か?」

「御意」

 ニックの返事を聞き、サザーランド国王の表情が険しくなる。

「水魔法を、やめい!」

「恐れながら、我が兄を殺したローラン国王の仇を討つ事をお許し頂きたく」

「ならぬ!」

 肯定しないサザーランド国王に、ラグとオーカスも床に片膝をついて進言する。

「恐れながら、私の家族もローラン国王に殺されました。ニック、いえケルティック卿と同じ思いでございます。どうか仇を討つ事をお許し下さい」

「サザーランド国王、わたくしもローラン国シーライト将軍として、家族の仇であるローラン国王を討ちとうございます」

「ならぬと言ったら、ならぬ!」

 なおも肯定しないサザーランド国王に、ニックの進言は続く。

「なぜでございますか? 我らはローラン国王という一人の人間が起こした戦争で、家族や友人を失ったのです。仇を今討たずして、いつ討てとおっしゃるのです?」

 今のニックは貴族の言葉を使っている。いつも変態振りを披露しているニックに上品な口調はとても不釣り合いに見える。

 サザーランド国王は、兄弟思いのニックの強い訴えを静かな表情で受け止めた。

「戦争で身内や友人を失ったのは、鍵の継承者だけではない。民もそうだという事を忘れてはならぬ。私は民の代表である国王として、ローラン国王を民の前に連れて行き、犯した罪の所業を民に問わねばならんのじゃ。今すぐにローラン国王にかけた水魔法を解くのじゃ」

 ニックは悔しそうに水の鍵魔法を使いローラン国王にかかっている水魔法を解いた。

 ローラン国王は呼吸がスムーズになり落ち着きを取り戻す。

 サザーランド国王は顔をあげて兵士に言った。

「即刻、ローラン国王を引っ立て」

「はっ」

 兵士は指示通りローラン国王を連れて行く。

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