第140話:ローラン国王10
「あそこにローラン国王がいます」
オーカスが指をさした空間の中央にはローラン国王のいるゆりかごがあり、中でローラン国王は巨大飛空艇ノアを操作してサザーランドの飛空艇団と戦っていた。
「おのれ。サザーランド」
ゆりかごの中からローラン国王の悔しそうな声が聞こえる。
ラグはゆりかごから出ているコードをメルトソードで切断した。
「俺の家族を殺しやがって」
神経と繋がっているコードを切られたローラン国王から悲鳴が聞こえる。
ラグがゆりかごに向かって何回かメルトソードを振ると、切断されたゆりかごからローラン国王が姿を現した。
ローラン国王は金属が貼り付いた顔をラグ、オーカス、ニックと順に向けて驚く。
制御を失った金属板は少しずつローラン国王の顔から剥がれ落ちていく。
「お前たちは壁に押し潰されて死んだんじゃなかったのか」
金属板の下から見えるローラン国王の表情は驚愕に満ちている。
オーカスはローラン国王に言った。
「確かに死ぬところでした。ですが、秘宝に身を委ね、私たちの死を確認しない王の傲慢さのお陰で、皮肉にも私たちは助かったのです」
ローラン国王はゆりかごから這い出しながら言う。
「違うのじゃ。余は、本当はそちたちを殺したくなかったのじゃ。余は無益な殺生は好まん。シーライト将軍なら分かるだろ。余はそちを小さい頃から目をかけてかわいがってきた。そんなそちを殺すなど、余ができようか」
オーカスは四つん這いになり体を小さくして身を震わせているローラン国王を見下ろした。
「ローラン国王」
オーカスの脳裏に幼い頃の自分をあやすローラン国王の姿が蘇る。だがそれもシステムの機械音声により掻き消された。
「光線砲チャージ完了。発砲三十秒前。二十九、二十八、二十七――」
照準はサザーランドの飛空艇団に合わせてあるが、そこには撃ち合いをしているローラン国の飛空艇団もいる。
ニックが声を上げる。
「大変だ! サザーランド国王が危ない。ローラン国王はシステムから切り離されていて光線砲を止められん。どうすればいいんだ」
ラグはローラン国王の襟首を掴む。
「ほかに光線砲を止める方法は無いのか?」
「知らん。余は知らん」
ローラン国王が首を横に振っていると、オーカスが持っていた魔法器を投げ捨てた。
「私が鍵の雷魔法を使って光線砲を止めます」
ニックが言う。
「光線は光だ。雷でどうやって光線を止めるんだ?」
オーカスは集中しながら言う。シーライト将軍として。
「雷にも光はあります」
オーカスの体が淡く輝く。
「ローラン国王。以前、飛空艇を落とすわたくしの鍵の魔法を見たいとおっしゃいましたね。よい機会です。今ここでお見せしましょう。賢者シーライトの血を引く、祖先オーカスが使ったといわれる、ユーフォリアの地の果てまでも攻撃が可能な、正義と勇気の象徴、わたくしの雷魔法を!」
オーカスは両手を広げて見上げた。