第14話:アルランドの英雄2
ラーグは判っていながらも振り返った。
「ジェイロー!」
ジェイローの背中に敵兵士が剣を突き立てている。その剣の刃の先がジェイローの胸からも見えている。
「おのれ。よくも!」
ラーグは向かって来る敵兵士を切り倒して進み、急いでジェイローの所に向かう。
敵兵士はラーグに気付きジェイローから剣を抜いてラーグと剣を交える。
剣の腕はラーグのほうが上で、ラーグは敵兵士の懐に入り込んで、いとも簡単に敵兵士を切り倒した。そしてすぐに地面に倒れているジェイローを抱き起こした。
「ジェイロー。しっかりするんだ!」
ジェイローは何かを言おうとして口を動かすが、声の代わりに口から血が溢れて流れ出す。咳き込んで血を吐き出したあと、ジェイローは息絶えた。
ラーグはジェイローの死を悲しむが、新たに現れた敵兵士はそんなラーグに同情などしない。今がチャンスとばかりに、ラーグの背中に剣を突き刺す。
ラーグは背中を押されたように感じた。それが痛みに代わり、激痛になっていく。ラーグは振り向いて自分の背中を刺している敵兵士を見た。
敵兵士は手柄を立てたと喜んで笑顔になっている。
その敵兵士に、ラーグは言った。
「笑顔で……私を……刺……す……な」
敵兵士にとって、急所を刺されているラーグなど死んだも同然。ラーグの言葉を無視して、剣を抜いて次に戦う相手に向かって行った。
致命傷を負ったラーグは、もう誰からも狙われなくなった。ラーグの瞳に味方の惨敗という悲惨な光景が映る。私はここで死ぬのか? ラーグの手足は感覚がなくなり、徐々に足の力が抜け、地面に両膝をつけたあと倒れて意識を失った。
直後、ラーグの全身は強い光に包まれる。
その光はアルランドの街と共に敵のサザーランド兵士をも焼き尽くし、その後支援のために到着したシーライト軍に勝利をもたらしたのである。
ラーグは致命傷をおっていたが、駆けつけたシーライト軍によって保護され、奇跡的に命を取り留めた。
数日後、捕虜となった敵兵士の証言により、ラーグはサザーランド軍に占領されそうになったアルランドの街を救った英雄となったのである。