第138話:ローラン国王8
ラグたちは動きが止まった壁の中にいた。ラグとニックの間にいたオーカスはズレて、今はラグとニックが密着し、オーカスはラグの後ろにいる。
ニックに抱き付かれているラグは怒鳴りまくった。
「顔を近づけるな!」
ラグはニックの顔を押し返す。
ニックは口付けをする体勢で言う。
「ラグのほっぺの匂いを嗅ぎたくて」
「嘘をつくな!」
「あの、壁の動きが止まったようです」
オーカスの言葉でラグとニックの動きが止まる。
「本当か?」
「言われてみれば」
ラグはニックの顔を掴み押しながら言う。
「今のうちに壁に穴を開けるか、壊すかしたいが、魔法が効かない壁はどうすればいいんだ?」
「俺の短剣じゃあ、壁に傷をつけるのがせいぜいだしな」
ニックは自分の顔にくっついているラグの手をどけながら考えるが分からない。
オーカスが言う。
「壁はまだラグの魔法を受けていないので、ラグの魔法に対しての防御プログラムは作成されていないと思います。ラグが魔法を使えばなんとかなるのでは?」
「俺の魔法は高熱だ。囲まれた壁を溶かす事はできるが、囲まれているから瞬間移動ができん。もし壁を溶かしたら、動けない俺ら三人は全身火傷を負う事になるぞ」
オーカスは限られた条件の中で冷静に考えて言う。
「ニックの言うとおりナノマシーンがとても小さな魔法器というなら、溶かさなくても、ある程度の熱でナノマシーンは壊れると思います。どのくらいの熱で魔法器が壊れるかは、魔法器産業が盛んなコトック地方育ちのラグなら知っていますよね。ラグの魔法でただの金属となった壁に、私の土魔法で穴を開けて脱出しましょう」
「わ、分かった。やってみる」
ラグは、オーカスとニックが火傷をしやしないかと、冷や冷やしながら火の鍵魔法を使って壁に熱を加える。
ニックは怖々と見ながら言った。
「ラグは、さっき魔法が使えるようになったばかりの初心者だったな」
オーカスは魔法器に触れて穴を開ける準備をしながら言う。
「だったらニック、私たちが火傷をしないように、水魔法で冷却して下さい」
「了解。それは名案だ」
「それでは、土魔法を発動します」
オーカスはラグの火魔法のタイミングをみて土魔法を使って穴を開けた。