第137話:ローラン国王7
ラグは壁を押しながら言った。
「ここから脱出する方法はないのか?」
オーカスも言う。
「魔法が通じなければどうすることもできません」
ニックも言う。
「俺はラグと密着したいのに、なんで間にオーカスを挟むの」
ニックはオーカスを徐々にずらしてラグと体を密着させた。
ラグは壁とニックを押し返す。
「貴様はくっつくな! 俺に触るな!」
「どうせ死ぬなら、好きな人に寄り添って死にたいんだ」
「ラグ。ニック。狭い所で動かないで下さい。痛いです」
壁が狭まりラグたちの体が押し潰されそうになった時、巨大飛空艇は大きな爆音をあげて船体を揺らした。
その揺れは、中にいるラグたちや、ローラン国王にも伝わる。
システムからローラン国王に艇内の爆発状況が告げられた。
「現在、サザーランド飛空艇団の攻撃を受けているもよう」
映像がローラン国王に送られる。
ローラン国の飛空艇団はサザーランド国の飛空艇団に囲まれ、下の砂漠地帯にもサザーランド国の旗を掲げた兵士が隊を組んで移動し、ローラン国の飛空艇団を魔法で攻撃している。
「おのれ、サザーランド。神の秘宝に仇をなす気か!」
ローラン国王はシステムに命令して巨大光線砲を発砲する。光線はサザーランドの飛空艇を何機も破壊し、近くに停滞していたローランの飛空艇をも破壊した。
艦内のサザーランド兵士は、サザーランド国王に言った。
「今の攻撃により、二十三機の飛空艇と通信が途絶えました。現在、巨大飛空艇は次の発砲に向けチャージです」
サザーランド国王は戦闘鎧に身を包み艦長席に腰かけていた。
「次の攻撃に備え弾幕を強化しろ。今、鍵の継承者は巨大飛空艇内にいる。我々は攻撃を続け、鍵の継承者の援護を引き続き行う」
四十歳前後のサザーランド国王の声が艦内に響く。
「了解」
サザーランド兵も飛空艇のシステムを操作しながら返事をする。
ローラン国王は全神経をシステムに委ね、戦況の把握に専念している。
ローラン国王が座っている機械のゆりかごは防御体制をとり蓋がスライドして動きローラン国王を包み隠すように閉まっていく。
「秘宝を手に入れた余と、まだ戦うというのか。サザーランド!」
そう言っているうちにも、サザーランドの攻撃を受けて船体は揺れ動いている。
機械のゆりかごの中でローラン国王は声を荒げた。
「ええい、何をしておる。次の光線はまだなのか?」
システムは機械音声で答える。
「次のチャージまで十分少々です」
「十分もかかるのか。遅い、遅過ぎる。なんとかできぬのか」
焦るローラン国王は、サザーランド国を滅ぼす事だけに集中している。