第136話:ローラン国王6
ローラン国王はシステムに更なる指示を出す。
「毒ガスも通じぬのなら、残りはこれしかない」
ラグたちを攻撃していた金属兵士と光線砲が床の中に消えた。
オーカスは一息つきながら警戒する。
「攻撃がやみましたが、この静けさは異様です」
ニックも警戒する。
「ローラン国王は、まともな奴じゃないからな。何を考えているのか分からん」
ラグも周囲の変化に気付いて攻撃をやめた。
「ローラン国王が消えたら急に静かになりやがった」
オーカスは周囲を気にする。
「私たちはここに幽閉されたという事でしょうか」
「幽閉されても、どっかに穴を開ければ出られるさ」
ニックはウォーターカッタで壁に穴を開けるが、穴はすぐに修復して閉じてしまう。
「修復スピードがあがってやしないか」
「だったら俺の高熱で壁を溶かせば済む事だ」
ラグは壁に手をつき鍵の魔力を使って高熱で壁を溶かすが火傷しそうになり手を離す。
「あちっ」
ニックはラグに言った。
「同じ場所で火の魔法を使い続けたら、高熱をまともに受けて身がもたないだろ」
「みたいだな。今まで瞬間移動をしていたから気付かなかった」
ラグは手の火傷を見ながら言う。
オーカスは土魔法で周囲を調べた。柱や壁が作り出す空間が3Dの立体画像となってオーカスの脳裏に浮かぶ。
「私たちは完全に幽閉されたようですね。しかも、徐々に部屋の空間が狭くなっています」
「なんだと!」
ラグは手の火傷どころではなくなる。
ニックも水魔法を使って周囲の状況を調べ、急に顔色を変える。水の鍵魔法は、周囲にある水の状態を把握できるのだ。当然ローラン国王の体内にある水分状態も把握できる。
「大変だ。ローラン国王は、壁を動かして俺たちを押し潰すつもりだ」
ローラン国王はラグたちを見ながら言った。
「火の鍵などくれてやる。その代わり、そちたちの命は必ずもらうぞ」
オーカスは焦った。
「ニックの水魔法で穴が開けれないなんて、どうすれば」
オーカスは魔法器に触れて、属性の違う魔法をいくつか投げてみるが、壁は壊れてもすぐに修復してしまう。
ラグは壁を見て言う。
「壁が波打って動いている。まるで生きているみたいだ」
「きっと、この壁はナノマシーンの集合体なんだ。魔法に対する抵抗力があがっているところをみると、学習能力も高い」
ニックの分析に、ラグが聞く。
「さっきから聞くナノマシーンってなんだ?」
「正確な答えじゃないが、目に見えないほど小さな魔法器だと思ってくれ」
「これが全部、小さな魔法器の集まりなのか!?」
ラグは壁に押されて部屋の中央に移動する。オーカスもニックも部屋の中央に移動する。
三人は肩があたるほど近づき、更に壁は空間を狭め、三人は体を密着させないと立っていられなくなった。