第135話:ローラン国王5
『そうだ。ラーグ。その火の魔法は、全てお前のものだ』
「よし、ならば――。メルトソード!」
ラグは、手に高熱の剣を現した。それで目の前の金属兵士を一刀両断する。
金属兵士は高熱の剣に裂かれて蒸発して消えていく。蒸発では再生できず、みるみるうちに金属兵士の数が減っていく。
ニックは言う。
「火の鍵の継承者として覚醒したのか」
オーカスはラグの魔法を見て喜ぶ。
「火の鍵の魔法が使えるようになったのですね」
「これが魔法なのかよう判らんが、楽に戦えるようになったのは確かだ」
ラグは瞬間移動して剣を振り回していたが、その剣を浮上し続けているローラン国王に投げつけた。
「逃がすか」
剣は何本にも分かれて機械のゆりかごに刺さり、ゆりかごになっている金属を溶かしていく。ローラン国王は嘲笑する。
「ラーグ。今頃火の鍵の継承者として覚醒しても遅いわ」
機械のゆりかごはローラン国王を乗せて天井のシステムと合体し、ゆりかごは天井に吸収されてしまった。ローラン国王がいなくなった部屋は壁からガスが吹き出す。
オーカスは咳き込んだ。
「また毒ガスです」
ニックは水の壁を作って言う。
「吸い込むな。さっきのガスより毒性が上だぞ」
「息が苦しい。少し吸い込んでしまったようです」
オーカスは呼吸困難を訴えて座り込む。
「おいおい」
ニックは水魔法を使ってオーカスに触れて体内の毒を中和する。
「どうだ?」
「楽になりました。鍵の水魔法って凄いですね」
にこやかに言うオーカスを見て、ニックはときめきを覚え心の中で思う「かわいい」と。しかし、最愛のラグの事を思い出し、ラグの状態も心配する。
「ラグ。毒ガスだ。大丈夫か?」
ラグは高熱で白く光る剣を何本も出して、ローラン国王が吸収された天井に投げつけている。ラグの周囲も高熱化しているようで、床が溶けて足場が悪くなると、瞬間移動で場所を変えて、ローラン国王が吸い込まれていった天井を攻撃していた。
ニックは唖然とする。
「こりゃダメだ。ラグは頭に血が昇り過ぎて、俺の声が聞こえていないみたい」
オーカスもラグを見る。
「でも、ラグを囲む高熱がバリアの代わりをしているみたいで、毒ガスはラグに届いていないようです」
「あれも無意識でやってるんだよな。きっと。すげぇな。益々惚れてしまう」
ニックはうっとりとした表情でラグを見つめた。