第134話:ローラン国王4
「ラグ……」
オーカスは我に返った。眼の焦点が合いオーカスのアクアマリン色の瞳はラグを見つめる。
ラグはオーカスから手を放した。
「俺は何があっても戦うぞ。探し続けた家族の仇が目の前にいるんだ。こんな所で泣いている場合じゃないからな」
ラグのアメシスト色の瞳はローラン国王を睨みつける。
ニックはエメラルド色の瞳でウインクしながらオーカスの頬を軽くつついた。
「正気に戻ったか? 俺も兄貴の仇をとらないといけなくて忙しいんだ。自分の身は自分で守ってくれよ。オーカス」
ニックは水の輪を作る。
ラグは床を蹴って瞬間移動をしてローラン国王に近づく。
オーカスは嗚咽が漏れる口に力を入れて奥に流れる涙を飲み込んだ。手で涙や鼻水を拭い去り、光を失った魔法器に触れ、再び魔力を注いでラグとニックと自分を守るエネルギーフィールドを作った。
「私も家族の仇を討つ。ローラン国王よ。覚悟!」
ローラン国王の機械のゆりかごは浮上する。
「わしの懐に飛び込んでおいて、勝てると思っておるところが小賢しいわ」
オーカスは得意の雷魔法を投げて、ローラン国王を追う。
「逃げるのですか?」
ニックもウォーターカッターを投げる。
「どこへ行く?」
ラグは瞬間移動をして飛び上がり、ローラン国王の機械のゆりかごに掴まる。ゆりかごの中に手を入れて王の耳を掴んだ。
「ローラン国王。母の形見は返してもらうぞ」
ラグは王の耳からイヤーカフを抜き取ると、自分の左耳に装着した。ラグは浮上するローラン国王のゆりかごから飛び降りて言った。
「いるんだろ? 賢者コトック」
賢者コトックの声がラグの体内で響く。
『我を受け入れ、keysに加わる気になったのか? ラーグ』
「それで家族の仇が討てるのならな」
『ならば誓いをたてよ。大地に恵みをもたらし、民を、我が子をあらゆる禍から守り、友の身に危険が及ぶ時は助け、keysとして鍵の魔力を持つ者は、常に力の均衡を保ち、平和を願い静かに暮らす。と』
「家族の仇が討てるなら、いくらでも誓ってやる。なんでもいい。早くやってくれ」
『分かった。ドクター・コトックのプロダクトキーをナノマシーンに送信』
ラグのイヤーカフが淡く光り、その光は広がってラグの全身を包む。
賢者コトックの声はラグの体内で響き続ける。
『ナノマシーン、データアップ開始。10%、20%』
ラグは賢者コトックの声を聞きながら、体を光らせて金属兵士と戦う。
『……50%……70%……90%、100%。再起動』
ラグの頭の中に火の魔法の名前と使用方法が浮かび上がる。
「これが火の鍵の魔法なのか」