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the keys  作者: 羽村奈留
133/158

第133話:ローラン国王3

 泣きじゃくるオーカスに、ローラン国王は無情な言葉を続ける。

「父親だけではない。殺したのは家族全員だ。シーライト家は、みな魔力が強くてな、一筋縄ではいかなかったゆえ、会食に招き毒をもって殺したのじゃ。最後まで生きていたお前の兄は、わしに呪詛を吐いたのでな、この手であの世に送ってやったわ」

「私の家族を…全員…殺した……。そんなはずは……。我がシーライト家は、戦闘魔法のエキスパート。父上も母上も兄上も、軍人として国に仕えてきた。私の家族が殺されるなんて。私一人を残して家族が全員死ぬなんて。――そんなはずは。私は、国や家族を守るために、女を捨てて将軍になったのだ。そんな私を支えてくれた家族が、全員殺されたなんて、信じられるものか!」

 オーカスは半狂乱になる。オーカスの魔法器は輝きを増して熱を帯び、ランダムにいろんな属性魔法が飛び出した。

 コントロールされていない魔法は周囲に飛び散り、天井や床、壁にあるシステムを破壊していく。

 エネルギーフィールドが無くなったラグとニックは、ローラン国王が操る光線を避け、ランダムに飛び散るオーカスの魔法をも避けながら金属兵士と戦い、二人はオーカスの名を呼んで駆け寄った。

 ニックは水の壁を作り自分とオーカスを守りながら言う。

「オーカス。しっかりしろ!」

 ラグも襲いかかってくる金属兵士を殴り倒してから瞬間移動をして水の壁の中に飛び込んでオーカスに言う。

「オーカス。ちゃんと前を見て戦え」

 オーカスの涙は止まらない。

「ラグ。ニック。父上が、母上が、兄上が。今まで私はなんのために戦ってきたのだ。なんのために将軍になったのだ。イヤだ。もうイヤだ。イヤだぁー」

 女性でありながら男と偽って将軍職に就き、約一年前の戦争では敵国であるサザーランドの軍用飛空艇をいくつも落としてきたオーカス。ローラン国王に利用されていたとはいえ、人々を守らなければならないkeysと称される(いかずち)の鍵の継承者でありながら、鍵の魔力を用いて大量虐殺をしてしまったオーカスは、ローラン国王より与えられた血塗られたマジックナイトの称号を呪い、そして家族を失った悲しみと絶望感により、何も考えられなくなっていた。現在のオーカスに残っているものは、ローラン国王を呪う思いのみで、オーカスが触れている魔法器は、オーカスの心の悲鳴に反応して作動し、無差別に多様な属性魔法をランダムに発動していた。

 ラグは、そのオーカスの心理状態を把握していた。ラグが過去に経験した苦しかった状態をオーカスは今経験しているのだ。しかもオーカスの場合は、目の前のローラン国王と戦う前に、心に湧きあがるオーカス自身を打ちのめす感情に、なんの猶予もなく挑まなければならい。ラグの時は戦争後の約一年という期間があったし、優しい言葉をかけてラグを支えた妻のオフェーリアもいた。しかし今のオーカスを支えるものは何も無い。ラグは目の前で打ちひしがれているオーカスに手を伸ばした。オーカスの襟首を掴んで持ち上げ、オーカスの顔を自分に向けてから、怒鳴り声で言った。

「オーカス! 戦争の時に何人が死んだ? その時もお前は泣いたんだろ。俺に言ったよな。シーライト将軍の言葉。重圧に耐えかねて苦しむような事があっても、死んでいった者が守ろうとした国や人々の平和な暮らしを約束できるその時まで、マジックナイトとして将軍の道を歩まなければならない。あれは戦争の時に人を殺した感触に恐れ戦き、泣いて苦しみながら考て出したお前の結論じゃないのか? お前の家族もそうだ。国民の平和な暮らしを守るために、命を賭けてローラン国王に逆らったんじゃないのか? シーライト将軍!」

 それは、ラーグ・フルフォンド・コトックとしての答えでもあった。家族を殺されたラグの瞳に涙が込み上げている。

 そう。今のオーカスの心情を一番理解しているのは、ラグ本人なのだ。

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