第132話:ローラン国王2
オーカスは驚愕する。
「王よ。これはどういう事ですか」
ローラン国王は静かな口調で言った。
「わしがこの巨大飛空艇でサザーランド国を攻撃すると言ったら逆らいおったのじゃ。王に逆らったのじゃ。当然の報いだ」
「王よ。あなたは狂っている」
オーカスは床に手をついた。手から出た雷魔法が床を渡ってローラン国王を包んでいる機械に届く。
「わしは狂ってなどおらん」
ローラン国王はオーカスの雷魔法を全身に受けながら続けて言う。
「シーライト。なぜわしに逆らう。目をかけてやった恩を忘れたのか」
「忘れてはおりません。忘れていないから、こうして王の前に馳せ参じたのです。王よ。神々の契約に反してはなりません。今はよくても、いずれ神々の怒りを受ける事になります」
「お前も父親と同じ事を言う。ならば、お前にも真実を教えよう。余がどれほど偉大なる存在かを知り後悔するがよい」
機械で顔を覆われているローラン国王の表情は分からないが、声は今も威厳に満ちていて王を包む機械が玉座に見えてくる。ローラン国王は言葉を続ける。
「余とそちらは神と呼ばれる人間に使役されるために作られた人形。このユーフォリアに暮らす人間のために、常に最適な環境を維持するようにプログラムされ、ユーフォリアの崩壊時には、こうしてノアに繋がれ人間を安全な地へ運ばなければならない。そしてお前たちは、余と人間を守るために作られた戦闘人形。余の対になる者として余を守るために作られたのが、シーライト将軍、お前なのじゃ」
オーカスは金属兵士と戦い、ローラン国王に近づきながら言う。
「ならば、なぜ王を守ろうとする私の言葉をお聞き下さらないのですか?」
ローラン国王の声が凄みを帯びる。
「お前も父親同様、秘宝から離れろと言うからじゃ。更にお前の父親は、わしが秘宝を求め、鍵を求めている事を、娘のお前に伝えると抜かしおった」
ラグは金属兵士を投げながら言う。
「ローラン国王。もしかして、あなたは……」
ローラン国王は不気味に笑う。
「察したか。英雄ラーグよ。そちは賢いのう。そうだ。そのとおりだ。サザーランドの紋章のマネなど簡単だったぞ」
「ローラン国王!!」
ラグが怒り狂う。
オーカスはまだ訳が分からない。
「ローラン国王。何をおっしゃっているのですか?」
ニックが言う。
「ローラン国王は、鍵を得るために、俺の兄貴を殺し、ラグの家族も殺し、オーカスの父親も殺したんだ」
「え……」
オーカスは頭の中が真っ白になる。その脳裏に賢者シーライトが姿を現した。
『クレア・オーカス・シーライト。思考を止めてはなりません。思考が止まれば魔力が弱まる。魔力が弱まれば、あなたも、ほかの継承者も死んでしまう』
賢者シーライトは、オーカスそっくりの成熟した女性の姿でオーカスに言うが、オーカスの口からは嗚咽が漏れている。
「父上……」
オーカスは泣き出した。泣きながら戦い続けているが動きが悪くなり、ラグたちを包んで守っていたエネルギーフィールドが消えた。