第128話:ゆりかご1
ローラン国王の体内には今もコードが入り込みローラン国王の神経と繋がっている。生きているかのように脈動する金属は全身を包み、ゆりかごの形となってローラン国王の体を支えている。
巨大飛空艇のシステムは、ローラン国王の意のままに動き、一瞬にして消えたラグたちを探していた。
「この巨大飛空艇と一体化し、艇内で起こっている事は我が身の一部のように分かるというのに、なぜシーライト将軍たちを見つけ出せないのだ」
金属に覆われて表情が分からないが、悔しそうなローラン国王の声が脈打つ金属の中から聞こえてくる。
その頃、ラグはニックと共に、鎧をまとったオーカスを連れて次の部屋へと進んでいた。
「ここは、光線砲の機械も、魔法生物も、出てこんな」
ニックも言う。
「なぜか分からないが、暫くこの中を移動したほうが安全みたいだ」
今ラグたちは細長い通路を歩いている。壁には一定の間隔で画面があり、古代文字によって何かの情報を常に表示していた。
オーカスは文字が流れる画面を見ながら歩く。
「移動するのはいいのですが、私たちは確実にローラン国王に近づいているのでしょうか。確かに今は攻撃を受けていませんが、ローラン国王の居場所も分からず、ここがどこなのかを把握しないで進むのは危険だと思うのですが」
傷が癒えたオーカスの体調は良さそうだ。
ラグは画面の間にある機械を一つ一つ見ながら言う。
「無我夢中で移動して飛び込んだ部屋だから、どこなのかさっぱり分からん」
ニックは自分の体内に響く声を伝える。
「賢者ケルティックが、ここは研究室だと言ってる」
ラグは機械にそっと触れながら聞き返す。
「何の研究室だ?」
「さあ」
ニックが首を傾げる横で、オーカスが画面を見て言った。
「画面内にある古代文字によると、人の代わりに働いていた人工物が保管してあるそうです。このボタンで人工物がある部屋へ行けるみたいです」
オーカスがボタンを押すと隣の部屋へ続く扉が開いた。
ラグは覗いて危険が無いのを確認すると中に入った。
ニックも中に入り、オーカスもニックに続いて入った。
中はとても広い空間になっていて円筒のガラスケースが整列していくつも並んでいる。そのガラスケースには液体が入っていて、液体の中に人間が裸のまま様々な恰好をして入っていた。液体に浸かっている人間は胸を動かして今も呼吸をして眠っている。
ラグは適当にガラスケースを見ていたが、急に叫び声をあげた。
「母上!」
ラグはガラスケースに駆け寄る。
キリエラにそっくりの灰色の髪をした女性が液体に入っている。その女性は瞳を閉じて意識は無いが、液体の中で呼吸をして生きていた。




