第127話:巨大飛空艇8
「オーカス。大丈夫か?」
「はい。大丈夫ですが、ここはどこですか? あんなにいた金属の兵士たちは、どうなったのですか?」
起き上がりながら言うオーカスは、肌寒さを感じ自分自身を見て小さな悲鳴を上げた。自身を抱えこむようにして膨らみのある胸を覆い隠す。
オーカスの女性的な素振りを、ニックはじっと見つめる。
「なかなか良い眺めだね」
「見るな!」
ラグはニックの目を手で覆った。同時にオーカスに背を向ける。
「すまんオーカス。見るつもりはなかったんだ」
オーカスの上半身を散々見てしまったラグの頭の中には、既にオーカスの色気めいた姿が鮮明な状態で存在している。
オーカスは恥じらいながら身支度を始めた。
「軍に入った時から、女性だとばれる時がいつか来ると覚悟をしておりましたが、いざばれると恥ずかしくて情け無いものですね」
ラグは頭の中にあるオーカスの裸体と睨み合っていたが、オーカスの言動に違和感を感じ振り返った。
「お前は情けなくないぞ。――!!」
「きゃっ」
鎖帷子を着ていたオーカスと目が合い、ラグはまた背を向けた。
「……すまん」
オーカスは急いで防弾チョッキに手を伸ばす。
「いえ。気にしないで下さい。私はローラン国を守らなければならない将軍の身。もうこういう事には慣れておかないと」
ラグの記憶に、鎖帷子から白い肌が透けて見えるオーカスの姿が加わり、ラグは鼻血が出そうになりながら言う。
「オーカスは情け無いんじゃない。任務を全うしようとする、いい奴なんだ。俺が保証する」
もっとオーカスの励みになる言葉はないものかと思案するラグの後ろ姿を見て、オーカスは嬉しそうに言った。
「ラグ。有り難う」
ニックは、ずっと黙っていた。ラグに顔を掴まれ目隠し状態なのに嫌がりもせず動かずにじっとしている。いや、じっとしている訳ではない。凝視しているのだ。ラグの指の隙間から見えるオーカスの動きを。
ニックの頭の中にオーカスの裸体が動画として記憶された事を、ラグはまだ気付いてはいなかった。