第124話:巨大飛空艇5
そして、三人を光線から守っていたエネルギーフィールドが消えた。
「オーカス。オーカス!」
呼びかけるラグの体が淡く輝く。
ローラン国王に繋がったシステムは、熱エネルギーを検測した。
「17エリアにて、スピリット級の熱エネルギーを感知。ただちに隔壁遮断による防御体制をとります」
「何!」
ローラン国王に、体を輝かせるラグの映像が届いた時、ラグの輝きは太陽光並みの高熱エネルギーとなって周囲に広がった。
ラグの周りを囲んでいた金属兵士や機械の塊は熱エネルギーにより一斉に溶けだす。
巨大飛空艇の先端の左側面で爆発が起こり、開いた穴から噴煙が立ち昇る。
ラグは体を輝かせながら顔を真っ赤にして唸り声を上げた。
「うおぉぉ」
ラグの足元には、古代文字が刻まれた魔方陣が浮かび上がっている。
金属兵士は次々と床から現れるが、魔方陣から発せられる高熱により赤味を帯びて溶けてしまうためラグたちに近づく事ができない。
爆発で開いた穴からは、風が吹き込み煙は渦を巻いている。
ラグはオーカスを抱きニックを掴み、瞬間移動をしてその場から消え去った。
システムはローラン国王に告げた。
「目標物を見失いました」
「逃げたか……。まあいい。どこへ逃げようと我が手の内。目標物の捜索を実行せよ」
ローラン国王はシステムに命令した。
ラグは瞬間移動を繰り返して、目に留まった扉の前で立ち止まった。腕の中には胸に剣が刺さっているオーカスがいる。その腕にニックも掴まっている。ラグは疲れて肩で呼吸をしながら言った。
「扉がここにあるが開かない」
ニックは通路の前後を見て警戒しながら扉に触れた。
「いや。必ず扉は開く。俺たちはそのための鍵を体内に持っているんだから」
ニックが扉や扉の周囲の壁を触っているうちに、壁の一部が光った。
「ドクター・ケルティックのプロダクトキーを承認」
機械音声と共に扉が開く。
ラグはオーカスを抱いて扉の中に入った。
ニックも後に続く。
ラグにとって、ここがどなのか、もうどうでもよかった。とにかく安静が必要なオーカスを床に降ろした。
「オーカス。大丈夫か?」
オーカスは意識を失っていて返事が無い。
剣はオーカスの胸を貫いているため背中から刃が突き出ていてオーカスを仰向けに寝かせることができない。
ニックはオーカスの背から出ている剣の刃をウォーター・カッターで切断した。
ラグはそっとオーカスを寝かせた。