第12話:ジェイロー
1年前の戦争。
ジェイローは、シーライト軍の陸の三十四部隊に所属している兵士。剣より魔法が得意な彼は、弓を持つ後方支援の魔法使いである。
その前衛に、ラーグ・フルフォンド・コトックはいた。
ここはローラン国国境にある貿易の街アルランド。
戦況は、投入されたサザーランドの兵の数が多く、それを受けて戦うローラン国側の不利といわれていた。
そのためアルランドで戦う三十四部隊もまた、倒しても倒しても次々と現れるサザーランド兵に悩まされ、苦戦を強いられていたのである。
ラーグは部隊の皆に言う。
「直に応援部隊が到着するはずだ。それまで持ち堪えるんだ」
仲間のために声を上げれば、当然目立つ存在となり、ラーグの後ろに敵兵士が迫る。
「副隊長。あぶない!」
後方支援のリーダーでもあるジェイローは、ほかの後方支援の魔法使いに指示を出し、自らも矢を放って敵兵士を倒す。
振り返ったラーグは、倒れた敵兵士を見てから次に向って来た敵の兵士の剣を交わして、瞬時に移動し周りにいる敵兵士を全員切り倒した。
ほかの前衛の魔法剣士もそれぞれに戦って敵兵士を倒していく。
周囲にいた全ての敵兵士が倒されたのを確認するとラーグは顔をあげた。移動と戦いの連続でわからなくなった自分の位置を確認し、次にジェイローを探す。
ジェイローは、周囲の状況に気を配りながら、ラーグの素振りを見て、自分の位置を知らせるために声を掛けた。
「魔法を使わずに何十人もの敵を倒す。相変わらず見事な太刀捌きだな」
ラーグは、自分もジェイローのように魔法が使えたらどんなに楽かと思い、苦笑しつつ周囲を警戒しながら言う。
「それもこれも、しっかり者の魔法使いが後方にいてくれるお陰だ」
ジェイローとラーグは、泥と返り血で汚れた互いの顔を見て、不利な状況下で戦う互いを無言で励ましあってから、また先へと足を進めた。
そんなジェイローとラーグは同じ年。勇猛果敢な20歳である。
ジェイローは軍の学校で魔法を、ラーグは騎士としての訓練を受け、卒業後に配属された三十四部隊で初めて顔を合わせた時から二人はなんの蟠りも無く意気投合し、ジェイローとラーグは無二の親友といえるほど仲がよかった。