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the keys  作者: 羽村奈留
113/158

第113話:融合

 闇はどこまでも続く。

 ラーグはどこへ続くのかも知れぬ黒い道を歩いていた。

 いつもの如く身を腐らせ悪臭を漂わせたジェイローとオフェーリアが現れてラーグを招く。

 ラーグはもう二人から逃げなかった。ジェイローとオフェーリアに歩み寄る。

「私は、また大切なものを失ってしまった」

 ラーグは泣きながらジェイローとオフェーリアにすがり付いた。

 泣きじゃくるラーグの体に、二人の血と、人肉の腐った悪臭がつく。

 ジェイローは、泣き崩れそうになるラーグを支えながら言った。

「副隊長が私を見捨てずに来てくれた」

 オフェーリアも言う。

「ラーグが来てくれた。嬉しい」

 ジェイローとオフェーリアは同時に言った。

「これでやっとラーグの中で生きることができる」

 ジェイローとオフェーリアは、ラーグの体の中に溶け込んでいく。

 ラーグは瞳を閉じて二人を迎え入れた。

 ジェイローの体が先にラーグの中に溶け込み、次にオフェーリアの体が溶け込む。

「ラーグ。いつまでも愛しているわ」

 最後にオフェーリアの声がラーグの心の中で響いた時、ラーグは瞳を開いた。

 ラーグの目の前には、まだ闇が広がっている。

「そんな……」

 ラーグは頭を抱えて苦しみ出す。

「本当に一人になってしまった。私は、死人(しびと)からも見放されてしまったのか」

 ラーグは大声を出して走り出した。

「誰もいないのか? 誰も?」

 誰かを求めて走っても走っても、闇は続くばかり。

「これから一人で、私はどうすればいいんだ? お願いだ。誰か答えてくれ」

 ずっと闇の中を走り続けたラーグは、息が切れてきて、酸欠で足が動かなくなり、ついには地面に両膝をつけた。

「誰でもいい。誰でもいいから、私の傍にいてくれ。頼むから」

 寒くもなく暑くもない闇。何の音もない。なのにラーグは自分の耳を塞ぐ。

「助けれくれ。ここから私を出してくれ。イヤだ。もうイヤだ」

 ラーグは、闇の中で上を見上げ、見えているのか分からない闇の空を見ながら、己の救いを求めて叫び続けた。

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