第113話:融合
闇はどこまでも続く。
ラーグはどこへ続くのかも知れぬ黒い道を歩いていた。
いつもの如く身を腐らせ悪臭を漂わせたジェイローとオフェーリアが現れてラーグを招く。
ラーグはもう二人から逃げなかった。ジェイローとオフェーリアに歩み寄る。
「私は、また大切なものを失ってしまった」
ラーグは泣きながらジェイローとオフェーリアにすがり付いた。
泣きじゃくるラーグの体に、二人の血と、人肉の腐った悪臭がつく。
ジェイローは、泣き崩れそうになるラーグを支えながら言った。
「副隊長が私を見捨てずに来てくれた」
オフェーリアも言う。
「ラーグが来てくれた。嬉しい」
ジェイローとオフェーリアは同時に言った。
「これでやっとラーグの中で生きることができる」
ジェイローとオフェーリアは、ラーグの体の中に溶け込んでいく。
ラーグは瞳を閉じて二人を迎え入れた。
ジェイローの体が先にラーグの中に溶け込み、次にオフェーリアの体が溶け込む。
「ラーグ。いつまでも愛しているわ」
最後にオフェーリアの声がラーグの心の中で響いた時、ラーグは瞳を開いた。
ラーグの目の前には、まだ闇が広がっている。
「そんな……」
ラーグは頭を抱えて苦しみ出す。
「本当に一人になってしまった。私は、死人からも見放されてしまったのか」
ラーグは大声を出して走り出した。
「誰もいないのか? 誰も?」
誰かを求めて走っても走っても、闇は続くばかり。
「これから一人で、私はどうすればいいんだ? お願いだ。誰か答えてくれ」
ずっと闇の中を走り続けたラーグは、息が切れてきて、酸欠で足が動かなくなり、ついには地面に両膝をつけた。
「誰でもいい。誰でもいいから、私の傍にいてくれ。頼むから」
寒くもなく暑くもない闇。何の音もない。なのにラーグは自分の耳を塞ぐ。
「助けれくれ。ここから私を出してくれ。イヤだ。もうイヤだ」
ラーグは、闇の中で上を見上げ、見えているのか分からない闇の空を見ながら、己の救いを求めて叫び続けた。