第110話:名も無き土地8
ローラン国王はニックの目の前で水の鍵を腕につける。そして土の指輪を填め、火のイヤーカフを耳につけ、ペンダントを首に提げた。
「おぉ。賢者よ。これがキー・スピリッツの声なのか」
ラグに聞こえない賢者の声がローラン国王には聞こえるようだ。
「賢者よ。どうか我が国を救うべく願いを聞き入れ給え」
ローラン国王は一人歩いて飛空艇団から離れて行く。少し離れてからローラン国王は空に両手を掲げた。四つの鍵は輝き、その輝きはローラン国王を包む。その後、機械音声がローラン国王から響いた。
『現在、ノアに接続中。接続完了。ドクター・リーのプロダクトキーを送信。ドクター・ケルティックのプロダクトキーを送信。ドクター・シーライトのプロダクトキーを送信。ドクター・コトックのプロダクトキーを送信』
ラグはローラン国王の手の先にある空を見上げる。
「一体何が始まるんだ?」
暫くして空に黒い点が見え、それがどんどん近づいて大きくなり、黒い点は名も無き土地を覆い隠すほどの巨大な飛空艇となってローラン国王の頭上に現れた。
秘宝は、空一面に広がる巨大な飛空艇だった。巨大な飛空艇は音も無く静かに浮いている。
巨大飛空艇の登場で、その下で浮いている王直属の飛空艇団がとても小さく見えてしまう。
オーカスも見上げて言う。
「これがユーフォリアの秘宝」
「なんちゅう、でかさだ」
ニックも巨大な飛空艇を見上げる。
巨大飛空艇は、飛空艇団を陰で被いながら移動するとローラン国王の頭上で静止した。
ローラン国王を招くように筒状の搭乗口がローラン国王の前に下りてくる。
ローラン国王は搭乗口に向かう。
オーカスが驚く。
「王よ。秘宝を求める時は、世界存続の危機のみのはず。私に秘宝探索の命を下された時、秘宝の場所を探すだけだとおっしゃたではありませんか!」
ローラン国王に駆け寄るために走り出したオーカスを、親衛隊は捕まえて取り押さえる。
「シーライト将軍。落ち着いて下さい。でないと我らは」
「放せ。なぜ王をお止めしないのだ。神々の怒りが恐ろしくないのか?」
ローラン国王は登場口に手を掛けて振り返りオーカスを見た。
「そちが秘宝を探索しているうちに、議事も話が進み、秘宝が何か確認する事になったのじゃ」
「確認なんてとんでもない。秘宝に触れてはなりません。古の神々との契約をお守り下さい。王よ!」
オーカスは叫ぶが、王は飛空艇なら大丈夫だと軽く手を挙げて巨大飛空艇に搭乗してしまった。




