第106話:名も無き土地4
オーカスが気付く。
「あの、グリフィンが」
ラグとニックは同時にグリフィンを見た。
ニックはグリフィンを見ているが、言葉はラグに対してだったりする。
「ラグの声がでかいから」
「仕留めないお前が悪い!」
ラグは怒ってニックに言うが、アメシストの瞳は身を起こすグリフィンを映している。
動き出したグリフィンを見ているオーカスは、恐怖で叫び声になってしまう。
「言い合いをしている場合じゃないですよ」
起き上がったグリフィンを背に三人は全速力で走り出した。
ラグは逃げながらニックに言う。
「ハンターに渡すために眠らせたんじゃないのか?」
「気絶だと言っただろ。あんたが騒がなければ、今頃は俺の魔法で眠ってたんだ」
「真っ黒な貴様の腹を棚に上げて、俺のせいにするな!」
オーカスが剣についている魔法器に手を当てながら言う。
「言い合いをしないで下さい。こうなったら私の魔法でグリフィンの動きを止めます」
グリフィンに雷を落とすが、羽から煙が上がるだけでグリフィンにさほど効いていない。
「やっぱり集中時間が短いと、強力な魔法が練れませんね」
「俺の金蔓に傷をつけないでくれ」
ニックが声を上げた時、グリフィンに光線が降り注いだ。
グリフィンは一気に燃え上がる。グリフィンは全く動かなくなり音を立てて地面に倒れた。
「俺の金蔓が燃えていく……」
ニックはがっかりした表情で地面に座り込んだ。
ラグがオーカスに言う。
「今のはお前の魔法か?」
「いいえ。飛空艇から発射された光線です」
「飛空艇だと!」
ラグが空を見ると何隻もの飛空艇が浮かんでいた。飛空艇にはローランの国旗があり、飛空艇団の中央に王家の紋章を掲げた飛空艇が浮かんでいる。
軍を退役したラグには懐かしく、しかし戦争の辛かった戦いを思い出してしまうため見たくない光景でもあった。