第105話:名も無き土地3
ニックは腕に水のブレスレットを現した。淡く光るブレスレットをグリフィンに向けると、ニック自身も淡く光りだす。
オーカスはラグに支えられながらニックを見て言った。
「あの青いブレスレットが、水の鍵です」
ラグはニックの腕に注目する。
「さっきまで、あいつの腕に無かったぞ」
「普段は幻術で見えないようにしてるってニックが言っていました。古代の文献には、水の鍵の魔力は相手のステータス変化だと記されていました。ニックが水の鍵の魔力を使ってグリフィンに何をするのか、よく見ておいて下さい」
「あいつは初めて出会った時から、幻術の魔法を使いブレスレットが見えないようにしていたってことか?」
「そういう事です」
「何て奴だ!」
オーカスとラグが話しているうちに、ニックの集中力は高まり、ニックがブレスレットの腕を振った時、グリフィンの立っている場所を中心に、地面に水滴が落ちたような波紋が起こった。
グリフィンは苦しみ出す。
「古代の文献によると、水の鍵の継承者は範囲魔法を使います。範囲を指定した場所に波紋が見えるのが特徴で、その中にいるものはステータス異常になり、場合によっては即死させる事も可能のようです」
オーカスが言い終えたあと、グリフィンは苦しそうに口を開けて地面に倒れた。
ラグは動かなくなったグリフィンを見て、オーカスを連れて瞬間移動でニックに近づいた。
「死んだのか?」
ニックはブレスレットのある腕を下ろして言う。
「いや。気絶しただけ」
「なんで仕留めないんだ? また人を襲うぞ」
ラグは止めを刺そうとして剣を抜くが、ニックは止める。
「待て。グリフィンはハンターに渡せば高値で売れる」
「金より俺たちの命の方が大事だろ」
ラグの声でグリフィンが目を開けた。瞬きをして言い合いをしているラグとニックを見る。