第104話:名も無き土地2
オーカスも空のグリフィンを見る。
「こんな砂漠地帯にも生息しているんですね」
ラグはグリフィンがくわえているものに注目する。
「あのグリフィンがくわえているのは、ひょっとして人じゃないか?」
ラグが言った時、グリフィンは急降下をしてラグたちの目の前に舞い降りた。
その時に起こった突風が砂を巻き上げ、ラグたちに吹き付ける。
目に砂が入らないようにラグが手で庇を作ってグリフィンを見ると、グリフィンはくわえていた人を舌に載せてから飲み込んだ。
ラグは二人に叫ぶ。
「逃げろ! 人喰いグリフィンだ!!」
ニックはオーカスが握っている手綱を掴んで地竜の尻を叩く。
「ここに町ができないのはあれのせいじゃないのか?」
「その可能性大有りだ」
ラグは手綱を引いて地竜の頭の向きを変える。
地竜は前足を上げて地面を蹴って逃げ出した。
グリフィンは獲物を見つけた喜びで、声高々に鳴いて、大きな翼を広げラグたちを追いかける。地面すれすれに飛び、鷲の首を伸ばしてラグたちを捕食しようとするが嘴が届かない。グリフィンの瞳は双方の地竜を見比べて、移動速度の遅いオーカスとニックの二人を乗せて走る地竜の後ろ足を、ライオンの爪で引っ掛けた。
地竜は横転し、オーカスとニックは地面に投げ出される。
「大丈夫か?」
ラグは地竜から飛び降りる。
オーカスは地面に落ちる前に魔法で体を浮遊させた。
「大丈夫です。こうなったら私の魔法で」
ニックは身を翻して着地する。
「気をつけろ! グリフィンが起こす風は強力だぞ」
グリフィンは降り立ち、地面の上で足踏みをしながら翼をばたつかせた。
グリフィンの強風を受けて、浮いていたオーカスは、紙切れのように吹き飛ばされる。
「わっ!」
「オーカス。体を丸くしろ!」
ラグが瞬間移動をしてオーカスが地面に叩きつけられる前に受け止めた。
「ラグ」
オーカスはホッとする。