第103話:名も無き土地1
オーカスは地竜に乗って移動しながら言った。
「最近、この辺りにはスクラップ屋が住み付き、廃材を売って生活をしているそうです。「名も無き土地」と呼ばれているこの土地に、そのうち町の名前がつくかもしれませんね」
ニックはオーカスの後ろで赤い髪を揺らしながら言う。
「なら、名前を考えればいいんでないの。「交わりの地」ってどうよ?」
間髪を容れずにラグが怒り口調で言った。
「貴様が「交わりの地」と名づけたら、しゃれにならん。ゲイで極彩色の偽ガイドに名前をつけられた土地など誰が喜ぶか」
「才色兼備な俺を、極彩色呼ばわりとは、つれないおっしゃりようだわ。あんたの連れは」
ニックはオーカスに泣きついた。
「貴様! いい加減にしろ! オーカスに抱き付くな!」
ラグはまた腹を立ててニックに暴言を吐く事になった。
雲一つ無い快晴の空。この空の果てに秘宝があると賢者ケルティックはニックに言ったようだが、それらしき物は何も見えないとラグは思う。
オーカスは辺りを見回す。
「ローラン国王に鍵と秘宝の情報を送ったら、秘宝探索の使者を派遣するので、名も無き土地で合流するようにと指示を受けたのですが、その使者はどこにいるのでしょう」
ラグも散らばる破片を見渡しながら、いつもの冷やかし口調で言う。
「目印として、胸のポケットに黄色いハンカチを入れておくように頼んでないのか?」
ニックも使者探しを手伝いながら言う。
「せめて待ち合わせの場所を指定しておかないと。こんなに広くては、すれ違うのも難しい」
「待ち合わせ場所を指定したら、お前がサザーランド国王に知らせるだろ」
ラグは、まだニックが信用できない。
ニックは諦め半分で言う。
「ラグが、キー・スピリッツと会話ができれば、俺の疑いが晴れるんだけど」
ニックは言っているうちに空を飛ぶグリフィンを見つけた。
「あ、あんな高い所で、グリフィンが飛んでるわ」
上半身は鷲、下半身はライオンの姿をした、体長十メートル以上はあるかと思われるグリフィンが悠々と空を飛んでいる。