第101話:林の中で2
昨夜、急いで逃げ出した事もあって積み荷に食料は積んでなく、朝食のメニューはとても淋しいものとなっている。人数は三人に増え、当然朝食の一人分の量も少ない。
オーカスはすまなそうに盛り付けて、ラグとニックに手渡した。
「すいません。この辺りは木の実ぐらいしかなくて」
「アルランドでの食事に比べたら、木の実もご馳走だ」
ラグはオーカスから朝食を受け取って食べるが、ニックは嫌そうに朝食を見て言う。
「こんなの食べたくないな。土の指輪を使って朝食を作ってよ」
「はあ? なんの冗談だ?」
ラグは、ニックに襲われないように距離をとりつつ手早く食事を終える。
ニックは朝食を置いて言った。
「あんたのキー・スピリッツだって言ってるだろ? 土の鍵の魔力を使えば、簡単に食物を生み出せるって」
「キー・スピリッツってなんだ?」
ラグは、ニックの言う事が分からない。
「あんたの左小指にある指輪だよ。土の鍵の継承者なら賢者リーの声が聞こえるだろ?」
「いや。聞こえん。夢でなら賢者リーと話したことはあるが」
「夢?」
ニックが困惑した表情になる。
オーカスがニックに説明をした。
「ラグは、火の鍵の継承者なのです。左耳についてるあのイヤーカフが火の鍵なのですが」
オーカスが示したイヤーカフを見てニックは驚く。
「火の鍵の継承者が、なんで土の鍵を継承してるんだ? てか、そんなの物理的に無理だ。俺たちkeysは、賢者の末裔ごとに定められた属性を持って生まれてくる。属性は絶対に変えられないから別の属性が生まれる事はない。それに鍵には意思があって同じ属性の者しか選ばないはずだぞ」
オーカスは言う。
「土の鍵がラグを気に入ったようで、ラグの左小指から抜けないのです」
「マジかよ! 継承者が二つの鍵を継承するなんて、秘宝の歴史始まって以来の出来事だぜ。しかも賢者リーに気に入られるなんて、俺のラグへの愛はどうなるんだ」
言ってからニックは脱力した。