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第7章 北条

私は目をつぶり死を待った。せめてひと思いに殺して欲しい。

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しかし、いくら待っても痛みは訪れなかった。私はそっと目を開けた。するとそこには、北条さまが立っていた。

「北条様、なんで?なぜここに?」

私は自然と涙が溢れてしまい、腰が抜けてしまった。すると北条さまは私を抱き寄せて優しい声で

「もう大丈夫だ。」



目覚めると私は自分の部屋にいた。

「ほ、ほ、うじょうさま?」

「ひなた!!目を覚ましたか。大丈夫か?怪我の具合は?」

護は涙目で私の手を握りしめていた。護のそばには右京と葵がいた。

「うん、大丈夫。でも私のせいであのお姉さん死んじゃった、、。」

「君のせいじゃない。あの盗賊がしでかしたことだ。自分が君のそばを離れなければこんなことにはならなかったのに、」

右京はすごく青ざめていて唇を噛みしめすぎて血が滲んでいる。相当心配したんだろう、本当に申し訳ない。

「姫様、もうこんな無茶はしなでくださいね。私は皆様に報告しに言って来ます。」

「ごめんなさい、葵。」

葵は力なく微笑んで静かに部屋から出て行った。

「ねぇあの盗賊どもはどうなったの、」

「あの不届き者どもは1人を残し、北条様が殺したよ。その後気を失った君を北条様がここまで運んで来たんだよ。」

「北条様はどこ?私謝りにを行かないと、」

すると葵が入って来た。

「お待ちください、まず千歳様と伊吹様、そして大名の方々にお顔を見せに行ってください。みなさま心配しています。」

「そうね、みんな本当にごめんね。心配かけて。じゃあ行ってくるね!」

「もう大丈夫なのか?」

「うん、行ってくるね。」

私は床から出て兄さま達がいる部屋に向かった。私の体には男に掴まれたときについた赤いあざしかなかった。

  本当、北条さまに感謝しないと。それにしても、北条さまの声初めて聞いたなー。すごく優しくて落ち着く声だった。でも、あの時北条さまが来ていなかったら私は今頃死んでいた。それを思い出して背筋が寒くなった。

  そして私はそっと襖を開けた。すると、いきなり兄さまが飛び出して来た。

「ひなた!大丈夫か?私をこんなに心配させるな!!」

「すみません兄さま。でも、でも私は助けを求めているあのお姉さん達を放って置けなかったんです!助けを呼んでいたら間に合わなかった。」

「まぁ、まぁ、千歳さま落ち着いて。お姫様が無事でよかったじゃありませんか。お姫様、私もとても心配しましたよ。」

南野さまは私の頭にそっと手を置いて優しく撫でてくれた。

「本当に申し訳ありませんでした!私の愚息がヘマをしでかしまして。あいつが妹様の隣から離れていなければ、、後でしっかり罰を与えておくのでどうかお許しください。」

東さまは頭を下げて畳にこすりつけた。

「いえ、私が勝手なことをしでかしただけなので、どうか右京を叱らないでください!」

「妹様にそう言っていただけると少し心が軽くなります。」

「ひなた、本当にすまない。護が調子に乗っていなければこんなことにならなかっただろうに。」

西山のおじさんからはいつもの笑顔が消えていた。

「西山、もっとお前の息子を教育しろ!私の息子もお前の息子に気を取られていなかったら、妹様の側から離れることもなかったはずだ!」

「申し訳ない、、」

東さまがすごい形相で西山のおじさんに怒鳴っている。

「やめてください。皆様。今回はひなたが自分勝手にしたこと。護と右京様に非はありませんよ。」

「伊吹の言う通りですよ。ひなたもしっかり謝罪しなさい。」

「はい!兄さま、兄上。皆様この度はご迷惑をかけて誠にすみませんでした。」

「いえいえ、お姫様が元気そうで本当によかったですよ。」

「ありがとうございます。では私は北条さまにもお礼を言いに行かなければならないので、」

「あぁ行っておいで。北条は梅の間にいると思うぞ。」

「ありがとう兄さま。では行って参りますね。」

私はそっと襖を閉めて梅の間に走った。

あぁなんでこううまくいかないんだろう。あのお姉さん達を助けて自分も逃げるはずだったのに。


私の後ろでコンコンと音がしたので振り向くと、そこには北条さまが立っていた。私が声をかけようとすると、北条さまはくるっと振り返り奥へ向かっていた。

「待って!」

私は必死に北条の背中を追いかけた。私は思いっきり走っているはずなのに全く北条さまの背中には追いつかなかった。北条さまはまるで幽霊のように音を立てずにスーッと動いている。

 そして私は全く知らないとろへたどりついた。私は小さい頃からこの城に住んでいるし、色々探検してこの城については知り尽くしているはずだったのに、未だに私の知らないところがあったなんてびっくりだ。私は息を整えた。

「あの北条さま、なぜ逃げるのですか?私謝罪をしに来たんですが。」

「それは無用です姫。」

北条さまはこっちを向かないで、静かに答えた。やっぱり北条さまの声は優しくて落ち着く。

「なぜですか?しかもなぜあそこにいたんですか?あんな人が全くいないようなところで何をしていたんですか?」

「言葉とは空虚なものです。いくらでも嘘はつけます。」

ハァ?何を言ってるのかしらこの人。頭がおかしいのかも。

「あーでも、できれば本当のことを教えて欲しいです。」

「姫、なぜ1人であの賊にどもに立ち向かったのですか?」

この人は人の話を全く聞かない見たいね。

「いや、あの場にいたのは私だけだったし。右京達を呼びに言っていたらあのお姉さん達は連れて行かれていたもの!私が助けず誰が助けるの?」

「なぜあなたは自分になら助けられると思ったのですか?」

「実は私右京と護と一緒に特訓していたから。」

「でもあなたにそんな力はない。」

「でも!1人助けることはできたわ!」

「しかし1人は死んだ。」

「それでも!それでも!私はあの人達を助けたかった。」

私はムキになり大声をあげていた。しかも目があつくなり勝手に涙が出てきてしまっていた。

「しかし女のあなたは力では男には敵わない。」

「女だからなによ!女の私ではどんなに努力してもみんなには追いつけないって言うの?私は結局いいように使われるだけの女にならないといけないの?いつまでも兄さまの力にはなれないって言うの?!そんなの嫌だ!」

「事実です。あなたは弱い。」

  私はその言葉を聞いて絶望した。私は心の奥ではわかっていた。どんなに特訓してもどんなに努力しても男の右京には追いつけないって、護との差も広がる一方だって。わかってた。わかっていた。それでも、いざ人から言われると辛い。

  北条さまの言うことはもっともだ、私があそこで飛び出していなければ北条さまが来て二人とも助かったかもしれない。私にもっと力があれば二人とも逃げられたかもしれない。死んだお姉さんも死なずに済んだかもしれない。

逃げたお姉さんも今頃罪悪感で苦しんでるかもしれない。そんな苦しみを与えたのは私だ。

 私は後悔で胸が潰されそうになった。耳の奥で殺されてしまったお姉さんの悲鳴が幾度も流れて来て私は溢れる涙を抑えられずにいた。

「姫、涙をお止めなさい。」

北条さまは優しく私を抱きしめ、囁いた。

「でも、私は」

「姫、今すぐに千歳さまのところへ行きなさい。」

「なぜですか、?」

「わかっています。千歳さまに半年ほど城を空けると言って来なさい。」

「え?」

「私について来なさい。」

「私にあなたを信じろと?」

「もしあなたが強くなりたいならばですが。」

「わかりました。」

正直私は北条さまを信じきれないでいた。でも私はもっと強くなりたい。誰かを守ることのできる強さが欲しい。女だからってバカにされるのが悔しいなんて言ってられない。私の浅はかな行動でもう誰も傷つけたくない。

  私は固く心に誓い、兄さまの元へ向かった。

私はみんなが集まっている部屋の襖を力いっぱい開けた。そこには護も右京もいた。

私は兄さまの向かい側に背筋をピンと張って座った。

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