第6話 SOS
「おーい!そろそろ戻るぞー」
「わかった。ひなた、寒くないか?」
「うん。平気よ、ありがとう。」
もう訓練を始めてからだいぶ時が流れ、秘密基地の木々はすっかり丸裸になってしまった。
「ひなた、君は随分強くなったな。」
「右京のおかげよ!私、本当に感謝してるのよ。まぁあれから護には一勝もできてはないけど。」
「まぁ俺は最強だからな!」
「何よ護も右京に一勝もできてないくせに、最強だなんて。」
私はわざとらしく大きなため息をついて首を振った。
「くぅ〜〜痛いとこついてくるな。がしかーし!すぐに右京にも勝って見せる!」
「あぁいつでも相手になるぞ。さぁ今日はこの後、城下にいくんだろう?早く戻るぞー」
『は〜い!』
その後私は城に戻った時、訓練着を脱いで少し綺麗な着物に着替えた。そして門で待つ2人のところへ走って向かっていると、曲がり角で誰かにぶつかってしまい尻もちをついてしまった。
「ごめんなさい!私急いでいたもので、、」
「いえいえ、こちらこそすみません。お怪我はありませんか?可愛らしいお姫様。」
私がぶつかったのは南野さまだった。
「はい!あの〜兄さまには秘密にしておいてください。廊下を走ってたなんて知れたら、怒られてしまうので。」
「ははは。わかっていますよ。ここに滞在中の間にお姫様がおてんばなのはよくわかりましたので。」
「ありがとうございます。では、これから私は城下に行ってまいりますので。」
「お気をつけ下さいね。」
「はい!!」
南野さまが滞在している間に南野さまとは随分と仲良くなった。そして初めにあった時よりも、全く緊張しなくなっていた。
私が南野さまに頼まれてよくこの城の中の植物や庭について教えたり、教えてもらっているうちに仲良くなった。南野さまは親切でとても物知りな人なのがよくわかった。まるで新しい兄ができたみたいで嬉しいけど、たまに距離が近い気がする。それがたまにすごく恥ずかしくて照れてしまう。「ひなたーこっちだ!おーい。」
「ごめーん。遅かった?」
「いや構わない。さぁ行こうか。」
私たちは城から出て城下町に向い、出店を見て回った。キラキラした髪飾りや小物を置いてある店や、綺麗な着物がたくさん売ってあってまるでお花畑のような店まである。
「これうまいぞ。右京も食べてみろよ。」
「確かに美味しいな。これは猪肉か、ニンクの葉と煮込んであるようだ。」
「それと、ジュバも入っているんだよ。この辺りの伝統料理なのさ!坊ちゃん達よそからきたのかい?」
「あぁ!俺は西山の領土からでこいつは東の領土から来たんだ。」
「そうかい。ここはいいとこだよ〜美人さんも多いしね。」
「おばちゃんも美人だしな!」
「あらあら、いい子だね。そんないい子達にいいこと教えてあげるよ。」
「なになに?」
「今、町の女の子の間で人気の髪飾りがあるんだよ。この髪飾りをつけていると運命の王子様が迎えに来てくれるとかなんとかってね!」
「なんだそれ、おばちゃん俺たち男だぜ。」
「この髪飾りにはもう一つの意味があるのよー。この髪飾りを男の子が女の子に送ると『自分は君の運命の王子様です。必ず迎えに行きます。』っていう意味になるんだよ。だから坊ちゃん達も好きな美人さんに送ると思いが届くかもしれないよ。」
「なんだそれ。ハハハハハ。そんなキザったいことするやついんのか?」
「いるんじゃないのー。いろんなお花の種類があって可愛いからね。その女の子のことを考えながら選ぶのも楽しいんじゃないかい。」
「そーなんだなー。俺は髪飾りよりも食べ物がいいな〜。おぉ!あそこからいい匂いがするぞー。」
「待て!護。では自分らはここで、ありがとうございました。」
「待って坊ちゃん!その髪飾りはここから10分ほど南に行った所にあるよ。」
「い、い、いや、自分は、とりあえずこれで、」
「おーい二人とも何やってんの?」
すごい勢いで走っていく護を右京が追っかけていく。何やってんだろあの2人。
「キャーーーーー。」
ん?なんかいま叫び声がしたような。周りを見渡しても誰も気づいてないみたい。私の気のせいだったのかなー。
「キャーー助けて!」
やっぱり聞こえる。どうしよう、右京達を呼びに行くべきかな、、でも私の勘違いかもしれないし。とりあえず、確認しに行くだけしに行こう。
私は声のする方へ向かった。どんどん声が大きくなっていく。すると、人の気配がまるでない神社にたどり着いた。そして私は茂みに隠れながら声の主を探した。
「助けて!!誰か!!」
「黙れ!」
「オイオイ顔には傷をつけるなよ。商品価値が下がる。」
「まぁ大して美人でもないが、品物は多ければ多いほどいいからな。」
数人の男が2人の女の子達の腕を掴み、どこかへ連れて行こうとしている。怖い。怖い。今から右京を呼びに行って戻って来たときにはもう、あの人達はもう連れて行かれているだろう。なら、なら、今この人達を助けられるのは、自分しかいない。ならやるしかない!今こそ右京の修行の成果を発揮する時だ!私はそばにあった木の棒を握りしめた。
「待ちなさい!!」
「なんだい?可愛いお嬢さん。」
「その2人を離しなさい!!」
「ごめんねーこのお姉さん達は大事な商品なんだ。わかったらおかえり。」
「お前ほんとぬるいなーこの小娘もさらっていけばいいだろ。」
「それもそうだな!!」
「子供が好きなやつもいるし、高く売れるぞ!」
「可愛い顔してるしな。」
「御託はいい!さっさと離せ!」
「捕まえろ。」
何人かの男が私に向かって来た。私はしっかり木の棒を握りしめて、思いっきり男を殴った。
「いった!くそーこの小娘!少し痛いめ見せてやる。」
「顔には気をつけろよ!」
男達は刀を抜いた。正直この人数の男を全員倒すのは無理だ。それなら、、あのお姉さん達と助け逃げるのが得策だ。そして私は向かってくる男達の間をすり抜けお姉さん達のもとへ走った。
「おら!!」
私はお姉さん達のそばにいた男の頭を思いっきり殴った。男はその場に倒れ動かなくなった。
「お姉さん達!今よ!早く逃げて!」
「ありがとう!今助けを呼んでくるわ!」
「いやいや!助けて!キャーーーーーーーー!」
お姉さん達は逃げようとしたが下駄の鼻緒の切れたおねいさんがさっき私が殴った男に捕まり、胸を刀で貫かれてしまった。あたりが血で真っ赤に染まった。まるで赤いお花畑のように、、
もう一人のお姉さんは泣きながら、『ごめんね、ごめんね』と言いながら逃げて行った。
「このくそがき!大事な商品を逃しやがって!」
「お前もなんで殺したんだよ!」
「黙れ!!あの小娘も殺せ。俺に逆らったことを後悔させてやる。」
男達は全員でかかって来た。右にいた男のスネを打ち、すり抜けようとしたが、右の男の後ろでは大柄な男が刀を持って振りかぶっていた。私はあまりの恐怖で動けなくなってしまった。その私の隙をつき後ろの男が私の腕を掴んだ。
「離せ!!私に触れるな!!」
「ほんと世話を焼かせるじゃじゃ馬だぜ。」
「こいつ女のくせなかなかやるな。」
「お前、頭は大丈夫か?」
「いや、まだ少しめまいがする。」
「お前がやるか?」
「あぁもちろんだ!」
私が殴った男が近づいてくる。
私が殴った男は刀を私の首に当て思いっきり振りかぶった。
だめ!もうだめだ、結局私は強くはなれなかった。でも最後にあのお姉さん達を助けることができてよかった。
「死ねーーーーーーーーー!!!」