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第5話 女であるがゆえ

私たちが城に戻るや否や葵がきて、

「皆様!こんな時間まで一体何をしていたんですか?こんなに泥だらけになって。さっさとお風呂へ行ってください。そのあとは夕食の宴にきてくださいね!急いでくださいませ。」

とまるで鬼のような形相でつめよってきた。

「相変わらず、おっかねーな。」

「さぁ護湯殿へ行こう。背中を流してやろう。ではひなた夕食で会おう。」

「またね。」

私は2人と別れると葵と一緒に女湯へ向かった。

「ねぇ、葵。」

「なんですか?」

「右京と護はいつ帰ってしまうの?」

「えーと、明朝ですよ。」

「そっか。」

「なんですか?姫様、右京さまのこと好きになったんですか?それとも護さまですか?」

「ええー!そうじゃないけど、、だいたい恋なんてよくわからないもの。」

「なーんだ、そうなんですね。まぁそれもそうですよねー女の子は恋をすると女らしくなるのに、姫様は全く女らしくないですものねー。」

「余計な御世話よ。」

「あらあら、失礼しました。」

「でも、久しぶりに護と会って右京とも仲良くなれたのに。もうお別れなんて、なんだか寂しいなーって。」

寂しいというのは嘘じゃないけど、もっと右京から鍛えて欲しかったし、護とも一緒に強くなりたかった。

「仕方ないですよ、、あ!それなら、右京様と護様を姫様の護衛にすればいいんじゃないですか?最近ここらで盗賊による被害が多発しているそうですから護衛とすればきっと2人はまだこの城にいれますよ。まぁ自分で言うのもあれですけど、こんな提案うまくいくとは思いませんけどね。」

「それよー!」

「えぇー、ほんとですか?」

うまくいくかどうかはわからないけど、このわがまま絶対通してみせるわ!

今度は桜柄の着物を着せられて、夕食の宴へ向かった。そして私は、そっと静かにおしとやかに襖を開けた。

「おぉー妹様今日はお楽しみいただけたかな?私めの愚息はいかがでしたかな?」

やっぱり東さまの笑みはいけ好かない。なんだか悪巧みしているような笑みだから。

「えぇ右京はとても親切でした。そこで、私の護衛として右京をこの城に残してはくれませんか?右京がよければの話なんですけど、」

「自分でよければ力になります。」

と右京はニヤッと笑った。どうやら全て察してくれたようだ。

「なんと!妹様は私の愚息をそんなにお気に召しましたか!なんと喜ばしい。是非ともよろしくお願いいたします。これ右京全力を尽くして妹様を守るのだぞ。」

「御意。」

「それと、護も残してはくれませんか?」

と私が言うと、西山のおじさんは大きくうなずき、親指を立ててニカっと笑った。

「護もいいでしょ?」

「もちろんだぜ!」

護は西山のおじさんとそっくりの笑みを向けた。

「すみません、皆様。私の妹が失礼でして。もしお断りの際は私に言って下さい。」

と兄さまが困ったような表情を浮かべた。なんだか兄さまに迷惑かけちゃったかな。

「いえいえ、嬉きこと限りなしですよ。こんな綺麗な妹様の護衛とあらば、こいつも喜んでいますよ。」

ガハハと東様が笑った。

「そう言っていただけると助かります。」

「すみません、わがままを言ってしまい。」

「気にするなよひなた!」

「ありがとう。ではそろそろ私は失礼します。」

「お姫様、私はまだこの城に滞在する予定なので何かあったら私を頼ってくださいね。」

「はい、では。」

  私は嬉しさのあまり襖をバタンと音を立てて閉めてしまった。中からみんなの笑い声の合唱が聞こえる。でもそんなこと気にならない、無理だと思っていたけど以外とすんなり私のわがままが通ったから!


  自分の部屋に戻って縁側に座っていると、自然と今日の対戦について思い出した。

  右京はすごく強かった。私なんて足元にすら及ばないほどに。正直なところ、護には力では叶わないとは対戦しているときにわかった。だから不意打ちを食らわせて負かすことしかできなかった。護はよく油断しているから不意打ちを食らわすのは簡単だったけど、私は全く勝った気はしなかった。心の中は悔しさでいっぱいだった。

  悔しい!私ももっともっと強くなりたい、、誰にも負けないくらいに。

でも、この国の女は力がなく無知な方が良いという風潮がある。女は何も知らずただ男に尽くし男のお飾りとして、そして男のが権力を手にするための道具として使われる。

  私はそんなの絶対嫌だ。女に生まれたからって何も知らないままなんて嫌だ!!私はこの国のことについてもっと知りたいし、兄さまの力になりたい。兄さまの味方になりたいんだ!

  それに何より、みんな私を王族の女としか見ていないのがムカつく。そんな肩書きより私自身を見てもらいたい。だから私にはもっと知識と力が必要だ。そのために私はよく書庫に忍んで入って知識を増やしていったが、力をつけるのは難しかった。木の枝を拾い人目を忍んで素振りをしたり、訓練している兵士の見よう見真似で稽古するのには限界があった。だから、右京に教えてもらえるのは本当に嬉しい。

  右京は同じ年の兵士と比べても桁違いに強い。明日から楽しみ。私も絶対もっと強くなるぞ!


  それから毎日のように私は護と右京とあの秘密基地に行き一生懸命に訓練した。はじめのうちは右京は刀を持たせてくれず腕の力をつけるための特訓や、脚力をつける特訓をした。ある程度力がつくとやっと刀を持たせてくれた。私は秘密基地の訓練がおわったあとも自分の部屋で特訓をした。きっと葵は気づいていただろう、けれど葵は見て見ぬふりをしてくれていた。

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