第4話 秘密基地と鍛錬
秘密基地に向かう道中私たちは、護はこの数ヶ月何をしていたかとか、右京の趣味や好きなものとか、私のことについて話してた。話に夢中になっているといつの間にか目的地に着いた。
「うわ〜〜この秘密基地全く変わってない!」
この落ち着く木の匂いや、空から射す木漏れ日も全てが懐かしい。青々と生い茂った葉が風に吹かれて、まるでおかえりとでも言っているようにザワザワと音を立てた。
「とても落ち着く場所だな。」
「そうだろう!ここに来ると帰ってきた〜って感じがするんだよな〜。」
護は自慢げに胸を張った。
「確かにね。さてと、早速始めない?」
「そうだな!右京も来いよ。確かこの辺に予備があったんだけど、、」
と護はほとんど崩れかかったタンスのようなものものを、あさっている。
「ひなた、今から何をするんだ?」
「うーんとね、剣術の稽古っていうかチャンバラみたいなものかなー。」
「え?なんで女の子の君が剣を持つんだい?」
「うーん、私は女の子だけど自分の身は自分で守りたいし、第一女の子だからって弱くていつも守られてるなんてシャクでしょ?あと、いつか兄さまの役に立てるような人になりたいの。あーあー私も男だったらなーって何回も思ったわ。」
「そうなのか、では自分も君の力になろう。」
「ありがとう。」
「しかし、君が」
「あったーー!!右京これ使えよ!!」
と護は叫んで、右京に向けて竹刀を投げた。右京は難なく竹刀を空中でキャッチした。
「えっと、右京ごめん聞こえなかった。なんて言ったの?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ。」
「そう。」
「早く始めよーぜ!」
と護がまるでじれったいと言うように手をパンパンと叩いた。
「そうね、まず誰と誰が行く?」
「まず俺とひなたからやろーぜ。始めに右京に見せた方がいいと思うし。」
「りょーかい。でも、見なくてもわかると思うけど、、。右京、私たちが準備終わったら始めって言って。」
「わかった。」
私と護は向かいあった。そして右京の号令を合図に先に動いたのは護だ。さすが負けず嫌いの護だけのことはある、きっと私に会えない間も練習していたんだろう。
「腕を上げたね。まもる!でも!!」
護が大きく振りかぶったその隙をついて、私は足払いをした。すると護は派手に尻餅をついた。そして、護は私の顔を悔しそうに見上げた。
「くっそー、また後で再試合だ!」
「何回でも受けて立つわよ。」
私は悔しそうな護に手を差し出した。
「あのー足払いというのはありなのか?」
と、なんだか腑に落ちない様子で右京が聞いてきた。
「ありなんだ、。型にはまった剣術よりも実践で使えるような、役に立つような剣を俺たちはやりたいんだ。」
「なるほど。」口では納得したように言った右京だが顔はやっぱりどこか腑に落ちない様子だ。
「さて、今度は右京やって見ない?」
「あー、やめておこう。真剣ではないとはいえ君に刀はむけたくないな。」
「なに?私が女だから?それとも姫だから?そんなこと気にしないで!あなたが来ないなら私から行くわよ!」
私は号令がある前に右京に飛びかかった。右京は防戦ばかりで一向に攻撃を仕掛けて来ない。その割には息を切らしていないし、疲れた様子もない
「なに?手加減してるの?それとも私が女だからバカにしてるの!?」
すると右京は竹刀を投げ捨てた。どうやら私をおちょくってる見たいね!女をバカにするとどんなことになるか思い知らせてやる!
私は思いっきり竹刀をふり下ろした。けれどそこには右京の姿はなかった。
「落ち着いて。」
右京は私の後ろにいて、左手は私の肩を掴み右手は私の竹刀のもった手を握っていた。
「なんで、、さっきまで私の前にいたのに。」
「怒らせたならすまない。別に君をバカにしているわけではないんだ。自分はどうしても君に怪我を負わせたくはなかったんだ。」
「お気遣いどうも。それにしても、右京相当強いわね!なんでそんなに強いの?」
少しムカついたけど、右京が私よりも強いのは事実だし、私が右京にボロ負けしたのも事実だ。
「自分は小さい頃から鍛錬を欠かさずやっているからな。」
「なるほどなーさすが東の一族だな。俺ももっと強くなりたいなー。」
「私ももっともっと強くなりたい。右京、私を鍛えて!」
「ずりーぞ!俺も鍛えてくれよ。」
「わかった。自分はまだまだ鍛錬が足らないが、できることはしよう。」
「そうと決まれば早速始めましょう!」
それから右京は私たちに構え方や、私たちの弱点、相手の隙を作る方法についてなど色々なことについて教えてくれた。右京から学ぶことはたくさんあった。右京は教え方も上手で、とても楽しかった。楽しい時間というのはすぐに過ぎてしまうもので、すっかり陽は落ちてカラスが巣に帰っていく。
「もうこんな時間になってしまったな。自分は出発の準備があるからもう城に戻るが、君たちはどうする?」
「俺もお腹すいたし、帰るかー。」
「そうね、遅くなると兄さまが心配するから私も帰るわ。」