新たな門出
昔々あるところに、4人の神様がいました。
1人目はアースティー。
2人目はウォールズ。
3人目はファウスト。
そして、4人目はコールディア。
4人はそれぞれ各々の国を作りそれを発展させていきました。
アースティーは人族が支配する世界を
ウォールズは古代生命体が、住まう世界を
ファウストは機械族が平和を約束する世界を
コールディアは…人族と魔族が共存する世界を創り上げました。
しかし、コールディアは世界を創ってすぐ、消えてしまいました。
後に残されたその世界は他の世界のことなど知る由もなく限られた資源の中で破滅を待つのでした。
おしまい。」
雪の降り積もるある日。
僕は一人ぼっちの部屋で一冊の絵本を読んだ。その音は私の鼓膜のみを揺らし、外に出て石畳に落ちる前に雪に吸い取られて消えた。
この国に、春は無い。
今から丁度1週間前の事だ。僕の実家に赤い手紙が届いた。
封には僕の名前と住所だけが書かれ送り主の情報は何もなかった。不思議に思い開くと、そこにはこう書かれていた。
【貴殿は星降る夜に神の加護を受けられた。証拠に貴殿の胸元に白き刻印なぞられん。】
アホみたいな文に呆れた笑みを浮かべると学校へ行くため、支度を始めた。
洗面所で顔を洗い歯を磨き、寝癖を直してご飯を食べる。
寂しいことにそこに家族はいなかった。
父は幼い頃行方不明となり、今は母が女手一つで育ててくれた。その事に対して不満に思うことはなくそもそもそれが当たり前だと認識してこの8年間を生きてきた訳で、今更何とも思わないのが本音であった。
着替えをしようと服を脱いだ時だった。
僕の鎖骨の真下、両の未発達な乳房のど真ん中に不思議な模様が描かれていた。
先ほどの手紙を思い出しまさかと頭を振る。そもそも、これがあるからと何だと言うのだろうか。その時、僕の足元に何かが滑り落ちてきた。どうやら、先ほどの謎の手紙らしい。
……あれ?さっき読んだのって…
一階のリビングで封を開けたはずのものが、何故か今、二階の私の部屋の床に落ちている。
その事に僕は少なからず寒気を覚えた。それでも、拾い上げると、もう一枚。
先ほどの手紙とは別の紙が見えた。
それを引っ張り出すと、真っ黒な紙に白い字で、
《ようこそ、才知と魔法の学園・ゼルノークへ。》
と言う文字が、綺麗な模様のすぐ下にやや大きめな字で書かれていた。そして、その下には、入学手続きや必要なものが書かれていた。
そう。これが、丁度1週間前の話なのだ。
それから、僕は直ぐにはこの怪しげな手紙を信用しなかったが、学校に着いた時、教室に入ってきた先生が突然大声で話し始めた。
「皆さん!今日は、とても、素晴らしい…そして、寂しいお話があります。」
何かと皆んなが注目を浴びせると、先生は語り出した。
「この中で、ゼルノーク学園に転入するお友達がいます!」
僕はその単語に耳を疑った。
え?まさか…それ、僕だって言わないよね?
「シリルさんです!!!」
僕だったー!!!
いや、え?何で?あれってイタズラじゃあ………
その時、どこかで舌打ちが聞こえた。教室の空気も悪くなる。
「…ていうかさー別にどうでもよくね?」
「それな、別にシリルがどこか行こうと関係ねーし。あ、ミューザ、後で一緒にお菓子買いに行こうぜ!」
「そうね〜そうする〜」
だんだんと話への興味を削がれていった子供達はそれぞれの話を勝手に始める。
「あれ?あれれれれ?ちょ、みんな〜!大事なお友達だよ〜?」
あたふたする先生には届かない、それでも、僕には届く声で
「そもそも友達じゃねえし」
と聞こえてきた。
これで、大体把握していただけたと思う。
僕は、このクラスでは孤立している。
原因は家庭環境。
まず、父親がいない事から捨てられたと言われ、家にあまり母親が帰らない事にも色々言われた。お前は要らない子供なのだと何も知らない無知なガキの妄想をひけらかしてくる。それだけではない。そもそも彼らの目にとまったのにはもっと根本的な事情があった。それは、僕の容姿だ。
髪は白く、目は翠。この国ではとても珍しい事だった。
まぁ、僕の先祖は元々この国の出身ではなかったし、母曰く、私は父のご先祖様から隔世遺伝したと言われているのだから、見た目が違っていても、当然のことなのだ。しかし、父とも母とも違うその色は、捨て子という話の種になってしまったのだ。
4日前。僕はゼルノーク学園のあるカサンドラと言う国へ向かうため空港に、来ていた。まぁ、この国は未だ発展途上国なため、飛行機しかないのだが。
以前どこかで聞いた話によると、海の向こうの国には飛行船と呼ばれる乗り物が発達しているらしい。何でも、その飛行船は動力源が謎のエネルギーによるものらしく、未だこの国の学者たちは手をつけられないでいるらしい。
僕は飛行機に乗り込む。席はファーストクラス。なんでも、この席は学園が取ってくれるものらしく、手続きの際にいろいろと送られて来た紙の中に書いてあった。
幼い頃、飛行機には一度だけ乗った記憶がある。それは、まだ父が失踪する前で家族3人、仲良く過ごしていた時。
懐かしさに少し、込み上げてくるものがある。僕は右手の裾を軽く目元にあてがった。
時間は13時間。その間は退屈でたまらなかった。ほとんど寝ていたような気もする。
とにかく、ずっと、同じ景色が続き僕は疲れ切っていた。
飛行機から降りて二時間後。僕はカサンドラ一のホテルのふかふかなベッドでゆっくりとした休息をとる事に成功した。