青年の魔法講座
なんとか間に合った……
「チキュウ、とは君のいた世界の事かい? ぜひ詳しく話を聞かせてほしいね」
ここは地球では無い……か。
さっきの魔法だけじゃ信じられな──ドドドドドド……
連続した足音……それもかなり大勢、何かあったのか?
「はぁ……しつこいなぁ~まったく」
この足音が何か面倒事の合図なのだろう。
この人は何者なんだろうか……って名前聞いてないな。
まぁなんか忙しそうだし、後でもいいか
「これは何の音なんだ?」
とりあえず聞いてみる。
「なんかさぁ~、ここ最近ゴブリンの活動が活発なんだよね~」
「ゴブリン? 人の形をした悪魔って奴か?」
それが本当にいるのなら、ここが異世界だと信じるには十分な情報となる。
「そうそう、よく知ってるね~、今から駆除に行くんだけどさ、ついてくるかい?」
駆除って……まぁここ異世界だという証拠になりそうだし、行くか。
「ああ、ここが異世界だって証拠になりそうだしな」
「本っ当に疑り深いね~、そんな性格だと嫌われるよ?」
は? 正直お前にだけは言われたくない。
俺は頭に僅かな痛みを感じながら、ベットからおりる。
「じゃあ、ついてくるがいいよ」
俺は青年の後を追って、外へ出るのだった。
「すっげぇ……」
外へ出ると、見渡す限りの大平原が広がっていた。
地平線なんてはじめて見たな……ゴブリンを見るまでもなくここが異世界だという証拠になる。
少なくとも日本ではないし、アフリカのサバンナにしては気温が低い。
「そんなに驚くとは流石の僕でも予想出来なかったよ。チキュウには平原がないのかい?」
「いや、あるにはあるが、こんなに広い物はなかったな」
「──あ、来たよ、あれがゴブリンだよ。異世界人君」
青年の指を指した先の彼方にから、百は軽く越えるだろうゴブリンの大軍が現れた。
遠すぎてよく見えないが、緑色の肌に、唾をたらして鋭い牙が並んだ口、概ね予想通りの容姿だ。
「では異世界人君、魔法の授業をはじめるよ?」
魔法の授業?
偉そうな言い方でムカつくな……まぁ情報が少しでも欲しいので、話を聞く事にはするが。
「まず魔法とはどんなものか分かるかな?」
分かるわけ無いだろう?
視線でそう訴えると、やれやれといった感じで話はじめる。
コイツは俺をイラつかせたいのだろうか?
「魔法とは、体内の魔力にイメージを書き込んで、体外の魔力に反応をおこさせる事なのだよ」
「魔力?」
魔力がなんなのか分からないので聞いてみるが。
「君ね~、魔力って言うんだからだいたい分かるでしょう?」
うん、もういいや、これが素なんだ、いちいち苛ついてたら疲れてたまらない。
「まぁ想像がつかない訳ではないが、確認をとりたい」
「またまたぁ~、そんな事言って~、本当は見当もつかないんだろう?」
……やばいもう我慢出来ないかも。
「あーでももうゴブリン来ちゃったし、先に続きを説明するよ」
ああ、是非そうしてくれ、ウザイからさっさと終わらせてくれ。
「まず魔法を使うためには、体内のどの属性の魔力を使うかを選択して、どの様な変化を加えるか、どの位置で発動させるかをその魔力に書き込む。まぁ詠唱だね。 それが出来たら、声に魔力を乗せて叫ぶんだ」
うーん思ったよりまともな説明だな。
「とりあえず見せてあげるよ」
そう言うと青年は、五十メートル程先のゴブリンに身体を傾けた。
「大火よ、拳程に圧され、我が視線の先で力を解放せよ、〈シュプレンゲン〉」
──ドカァァァン!
青年が声を発したと認識した瞬間、目の前で大爆発が起こった。
爆発で起こった砂煙が晴れると、ほんの数秒前までゴブリンがいたであろう場所は跡形もなく消え去っていた。
「どうだい? 魔法ではこれ以外にも色々と出来るんだよ──石田蓮斗君?」