力の招待
竹林を彷徨ってはや五時間。
もうすでに日は落ちて、月がポッカリと浮かんでいる。しかし竹林は騒がしい。何故なら……
「ヒャーハハハ!てめえら!弱過ぎんぞォ!」
「キャーッ!」\ピチューン/
暴れているのは紛れもない文月守本人だ。
しかし、性格は全く別人。完全に妖怪側の意識に持って行かれている。
竹林に居る兎妖怪達は全く歯が立たず、次々に吹き飛ばされて行く。そんな中、たった一人姿の違う少女が現れスペルカードを発動した。
「そこまでよ!スペル!散符『真実 (インビジブル)の月ッ!」
「効くかそんなもん!豪符『空 気 (エア)膨張撃』ッ!」
二人のスペルはぶつかり合い消えた。しかし守の弾幕は全て爆発し、凄まじい衝撃波が起こった。今の守の弾幕は空気を収縮させ作られたもの。
ただ、普通に収縮した訳では無い。能力を解除すると、元に戻ろうとする力が働き、さらに膨張の能力を同時に使用することによってマッハを超える速度で元に戻し衝撃波を引き起こす。
「っつ〜〜……なんてパワー⁉︎」
「雑魚が!引っ込んでやがれぇ!アルティメットエアプレッシャー!」
ズガンッ!と言う鈍い音。急激に膨張させた空気が爆風を生み出し少女を地面にクレーターが出来るほど強力に叩きつけた。
「う……ぁ……っ。」
「ふん。調子に乗るなよ、クソガキが。」
守が少女に背を向けた時。
ヒュンッ!そんな音がした瞬間に、守の頬を掠めて剣が飛んで来た。
飛ばした犯人は海月小裁。博麗神社の神だ。
「悪いけど、霊夢に今の貴方バケモノを会わせる訳にはいかないわね。」
「ほぅ……強そうな奴が来やがったな。」
この言葉に対し、違和感を感じた。
(……?私を知らない?どうゆう事かしら。)そう。既に何度か会ったはずだ。全く知らないと言う反応はおかしいのだ。
「少し聞くわ。貴方の名前は?」
「あ?俺様か?俺様は文月守だ。どう見たってそうだろ?」
「……普通本人がそんな言い方はしないわよ。貴方バカね。」
「やっぱばれたか。そうだ、俺様は文月守であって文月守じゃない。豪魔としか呼ばれたことはねぇな。」
守の両親は月の出る夜、必ず外に出さなかった。その理由が豪魔の存在。強すぎたその妖怪は、何者かにより守に封印されていたのだ。月の力により封印が弱くなる
「豪魔……聞いたことも無い名前ね。貴方は本当に強いのかしら?」
「そうだな……てめえを一瞬で葬れるぜ?」
既に豪魔は小裁の後ろに立っていた。
収縮の力を使い自分の周りの気圧を下げ、スピードを上げたのだ。そして、首を跳ね飛ばした。
体は膝から崩れ落ちる。
「ふん呆気ねぇな。弱すぎだ。」
「痛っつーー……全く、いい度胸してんじゃ無い。神を殺すなんて。」
「馬鹿な……確かに首を跳ね飛ばしたはずだ。」
「あいにく不老不死でね。首を飛ばそうが心臓を潰されようが死なないの。」
そう。海月小裁は蓬莱の薬を大昔に飲んだのだ。
実験体として。
「さあ。反撃開始ね。」