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お稲荷さま  作者: 麻本
10/18

キッコさん、帰る

だと、思いたい。

けれど、退魔師の月蓮さんの言う事が本当なら。

キッコさんは、これからどう行動してくるのだろう?

・・・全く。

どうして、月蓮さんは、余計な事を吹き込んでくれたんだ!

自分の心に、凄い迷いが生じて居るのが分かる。

何だか、埒があかない。

僕は、この状態を切り抜けようと思い、月蓮さんが退魔師である事以外の質問をぶつける事にする。

「月蓮さん。あなたは、何処にある寺の人なのですか?」

「何処って?それを答える必要は無いわね」

「じゃあ、此処から近いですか?遠いですか?」

「結構遠いわよ・・・鴨川だもの」

「じゃあ、この木皿津へはどうやって?」

「車よ?」

「どこに泊まって居るんですかぁ?ホテル?それとも系列の、お寺の宿坊とか?」

「ううん。妹の所・・はっ!キミなかなかやるね。思わず答えてしまったわ」

僕はマシンガントーク的に質問をした。

それに釣られて、月蓮さんは答えてしまったのだ。

これを、横で聞いていた美徳も、質問する。

「月蓮さん。さっき『妹の所』って言ってましたけど、妹さんは何をしている人ですか?同じく退魔師とか?」

「さっきから。あなたたちねー?これ以上、答える気はもう無いわね」

「えー!?」

「そう言えば聞いて無かったわね。キミ達の名前は?」

「五井です」

「あたしは、養老です」

「五井君に養老ちゃんね。覚えておくわ。それとね。あたしは、この辺りのお寺で世話になっているわよ。それに、あなたたち二人の事は聞いてたし、予測済みだったのよ。ごめんね?」

「・・予測済み?なんでいきなりそんな事言うんですか?」

「あらぁ?分からない?あたしと五井君達の身近に、特徴を教えた人が居るってことよ」

話の余りの飛躍っ振りに訳が分からない。

「んん?ちょっと待って。他人であたし達の特長知っていると言ったら・・ああーっ!あの時の占い師ィ!」

美徳が何か思いあたったみたいで、驚いていた。

「占い師?」

「ほらぁ。木皿津コミュニティープラザの中で占いの館があって、占って貰ったじゃない?その時、何か不穏な事も言っていたけど、あたし達からキッコさんの事を感づかれていたのよ!」

「養老ちゃん、ご名答」

「じゃあ、あの時の占い師が、月蓮さんの妹さんで、知らせていたって事なんだな」

それから。

月蓮さんとのやりとりが少しあって。

「・・それなら、様子を見させて貰うわ。

余りに人を化かすのが頻繁で、酷いようならただではおかないから。妖弧であるキッコにそう伝えておいてね?」

「はい。伝えておきます」

「ちょっ、ちょっと待って!月蓮さん!『化かすのが頻繁なら』って?少しは許してくれるの?」

「それは・・やって欲しくないのは勿論だけど。こっちでお世話になっている御住職から言われてねぇ。

養老ちゃんの言う様に、街の活性化に繋がって居るのを言われたのよ。

たまになら、致し方ないとは思うけど、それが悪質ならば、その時はね?」

「そう言う事ですか」

「じゃあ、今日の所は退散するわ。五井君ちょっと」

「何です?」

「これ、今いるお寺の住職さまの名刺。渡すわね」

そう言って僕に名刺を渡してくれた。

その名刺には寺の名前と住職さんの名前が書かれている。

名前は「佐宗道玄」と書かれていた。

住所によれば、木皿津の東部。

この町は僕の住んでいる所のほぼ隣町だった。

「近いじゃん」

「本当だ。近いわ」

「ふーん。近いんだ?それなら、監視しちゃおうかしら?」

「それは止めて」

僕は、丁寧にお断りした。

「そう?残念ねぇ」

え!?もしかして、冗談とかじゃ無くて本気か!

「じゃあ、キッコの気配も感じ無いし、今日の所は引くとするわ。五井君達、いい事?

キッコに会ったらイタズラは、慎むように伝えてね?」

「はい‥」

僕と美徳が返事をする。

そして、月蓮さんはこの場を去って行った。

「美徳。僕達も帰ろうか」

「うん」

僕達は一度自転車の有った所に戻り、それから僕は美徳の家まで送り、そして自分の家に戻った。

「ただいま―…」

「おかえりー」

ただいまと言った所で誰もいな・・い!?

おかえりとかって声が聞こえたよな?あの声は、キッコさんか?

僕は駆け足で、リビングに向かう。

「キッコさん。家に帰ってきてたのか!」

「そうじゃよ。また、世話になるぞ。それとな、今日は客人を連れて来た。面倒は、あたいが見るから一時、泊めてやってくれ」

「お客さん?どこに居るの?」

キッコさんの上半身を中心に見てみたが、それらしい姿が無い。

「見えぬか?ほれ!」

キッコさんは、下から何かを抱き上げた。

その正体は狸だった。

「タヌキ!どうしてタヌキが客人なんですかっ!」

「分からぬか!?こやつはポン子なんじゃて」

「何ぃ!ポン子さんなの!」

まるっきり狸の姿をしたポン子さんは、僕をじーっと見る。

どこかつぶらな瞳。

「うわー!そういう目で見ないでよ!」

何か、こう言うのは苦手だ。

「健太郎や」

「はい?」

「ポン子はお腹を空かしているみたいじゃ。何か無いのか?」

「空かしてる?そう。」

「僕は冷蔵庫を見る。

すると、ウインナーが2本残っていた。

「じゃあ、とりあえずコレを」

そう言って僕はキッコさんにウインナーを手渡す。

手渡されたキッコさんは、直ぐに狸の姿をしたポン子さんに食べさせた。

狸の姿をしたポン子さんは食べ終わると舌をペロッと出す。

「これでいい?」

僕はキッコさんに質問した。

キッコさんとポン子さんは向かいあっている。

「・・ありがとうとポン子も言っておるよ」

見た感じ喋っている様子は無い。

コレって妖怪同士の意思疎通か?なんて僕は思ったり。

・・しかし眠い。

僕はキッコさんに寝る事を伝える。

「キッコさん。僕はもう寝るからね」

「床につくのか?じゃあ、あたいも一緒に」

キッコさんはポン子さんを抱きかかえ、押し入れに入って行った。

「健太郎。お休み」

「おやすみなさい」

さて、僕も寝ようっと。


翌朝。

目が醒めると、お腹の辺りに違和感が。

うーん?何か重い!?

そう感じた、次の瞬間。

ボスっ!という、音と身体にある衝撃に目が更に醒める。

「何だっ!朝っぱらから!」

僕は飛び起きた。

すると、狸が、布団の横をゴロゴロ転がっていた。

「衝撃の原因はポン子さんかい!手荒な起こし方しやがってからに!」

キッコさんは、この様子をみて笑っている。

全く。

朝からイタズラなんかして。

「おはよう。健太郎」

「はぁ。キッコさん。おはよ。朝からやってくれるじゃん」

「いや?あの起こし方は、ポン子がポン太郎に毎朝している起こし方だそうじゃ?

それをして貰った!」

「えっ?あの、痛い起こし方を毎朝?」

「そうらしいがの?」

「げげ」

「あの位せぬと、ポン太郎は起きないそうじゃ。それを再現して貰った次第じゃ!」

「ポン太郎さんとは違うんだから、僕にしないでよ・・・」

「すまぬな。しかし、これがあたいの性分じゃ」

「性分とか言われても何だかなー!」

やはり、過去から人を化かして来た妖怪って訳か。

・・・朝食も終わり、のんびりしていると、家の呼び鈴がなった。

僕は、玄関に行き、扉を開ける。

「おはよっ!健太郎」

「おはよう美徳。こんな朝っぱらからどうしたんだよ?」

「別にいいじゃない?夏休み何だし」

そういいながら、ズカズカと玄関を上がる美徳。

「朝食は食べたの?」

「ん?食べたけど。今日は、何しに来たんだ?」

「健太郎の部屋の片づけよ」

「はぁ?何でそんな事を。余計なお世話だぞ!」

それで、美徳が僕の部屋へ向かおうとした時だった。

狸の姿をしたポン子さんが、美徳を見る。

その視線に美徳は気がついた。

「やだー☆かわいいぃん☆」

美徳が狸のポン子さんをみて惚れている。

そして、動きが止まった。

美徳は狸のポン子さんに駆け寄り、思わず抱きつく。

・・・もしかしたら美徳は俺の部屋に行くのを止めた?

だとしたら、ポン子さんナイスだっ!

今の僕の部屋は、片付けられたら困るものあるしなぁ。

「ねぇ。健太郎!?この狸はどうしたの?」

「その前に、ある変化に気付かないか?」

「え?変化?」

「そうだよ?キッコさんに気付かないのか?」

「えっ!?」

廻りを見回す美徳。

「ハハハ・・夢中になって気づかなかった」

何だか、白けた様子のキッコさん。

「美徳があたいに気付かないとは。ポン子の可愛さも罪じゃなあ」

キッコさんが、言った。

んん?何言ってるんだこの人は。あ、妖怪か。

「キッコさん?この狸はどうしたの?」

「どうしたも何も、昨日その場に美徳も居合わせた筈じゃが?分からぬか!?こやつはな

ポン子なのじゃて」

「ポン子さんなの!?どうして?」

「どうしたも何も。妖力の大半を奪われて、ご覧の有り様じゃ。しかしのぅ。美徳はよっぽど獣好きなんじゃなぁ?」

「獣好きって・・そりゃあ、犬と猫も好きだけど。狸は間近でみるの、初めてなんだもん。それで、あんな目で見つめられたら」

「どうするー?ア○フルー・・」

「健太郎?。それっていつ、どこでやっていたの?あたしは分からないわ」

「すわ?美徳は、これを覚えてないのか?ガーン!!ジェネレーションギャップが!」

「健太郎?あんたネタが、古過ぎんじゃない?」

「・・そりゃ、悪かったな」

「でもぉ、ポン子さんも狸の姿のままでぇ・・・そうだ!みんなで覚えて散歩に行かない?」

「散歩?キッコさんとポン子さん連れて行ってか!?」

「うん」

「狸なポン子はどうする?放し飼いみたいに付いていって貰うのか?」

「じゃーんこれ持っているから大丈夫!」

「なんだぁ?首輪にリード?美徳、お前はそれをどこから出した!?」

「細かい事は気にしないで?」

「気にするってーの。でも、ポン子さんはそれ、嫌がるんじゃないか?」

「やって見なきゃ分からないわよ?ねぇ、ポン子さん『狸のふり』は出来るわよね?」

美徳が前屈みになってポン子さんに質問する。

するとポン子さんは首を左右に振った。

「そーお?じゃあ、実力行使っ!」

美徳はポン子さんを捕まえようとしたが、ポン子さんは逃げ出した。

「ほら。やっぱり嫌がったじゃん」

…そんなこんなで、みんなで外に出る。

僕は取りあえず、キッコさんの好物であるいちごミルクがある販売機まで行く事にして、そこまで歩く。

そして、販売機の前に来た所で妙な違和感を感じはした。

だけれど取りあえず、キッコさんにいちごミルクを。

美徳にはグレープフルーツジュース。

僕は紅茶を買った。

ポン子さんには、狸の姿なんだしいいか?

そう思ってみたら、キッコさんに何度も飛びついている。

欲しい見たいなので、いちごミルクを買ってあげてみた。

すると狸の姿ながら器用に座り、飲んでいた。

そして、自動販売機の裏の、神社の土壁を改めて見る。

すると、何かかなり汚れて古ボケた感じだし、何かカビとコケの混ざった異様な匂いが微かに漂う。

僕は気になったので、

「ちょっとみんなでこの境内に入ってみないか?」

と言って提案してみた。

するとキッコさんが

「ここは、あの乾坤の居る所じゃな‥何か気になる。行ってみようかの?」

「キッコさんは乾坤が苦手じゃ無かったの?」

「苦手は苦手じゃがのう。気配を感じられぬのじゃ。健太郎も、変化に気づいたから、此処に入ろうと言ったんじゃろ?」

「うん。確かめたいから」

「そうか。ならば行こうか。健太郎に美徳。ポン子も。それでは行くぞ」

今度はキッコさんが先導して、神社の正面に廻る。

そして、様子をみてみると。

「これは!」

鳥居の朱色は酷く褪せていて、本堂も彫刻の色が剥げ落ちて、木目が剥き出しになっていたりした。

心配になって本堂に近づいてみると、妙に埃っぽい。

そして、本堂の脇に小さな売店があるのだけど。

そこを覗くと、住職さんらしき人が居る。

しかし、その様子はかなり暗い。

それなんで、僕は声をかける事にした。

「ごめんください。ちょっとおみくじを引きたいのですけど」



つづく

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