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外人と日本人

 今日の明け方のことだった。

 GW最後の休日をのんびり過ごそうと夢の中を探索していたところ、突如大きな揺れが起こり、目が覚めた。

 地震か? それとも夢か?

 寝起きで目をこすりながらそう思っていると、隣の妹の部屋からキャーキャーと声が聞こえてきた。この声はフランだ。フランは妹の部屋で布団を敷いて寝ているため、声の主はフランで間違いないだろう。というか、彩奈がこんな大声を出すわけがない。

 僕は一応状況を確認するために起き上がって妹の部屋へと向かった。

 揺れが静まり返ったあとの家の中は、いつも……いや、いつもこの時間に起きないからわからないけど、静寂が漂っていた。

 妹の部屋のドアをノックする。


「彩奈ー。フランー。大丈夫ー?」

「オー! 浩二ー! 地震よー! すごい揺れたよー!」


 やはりフランらしい。


「開けるよ」


 そう言って僕はドアを開けると、依然ベッドで寝たままの彩菜と、勉強机の下で布団を被って退避しているフランが目に入った。

 

「……大丈夫?」

「浩二! 屋根が崩れてきたら大変ヨ! 早くこっちに来イ!」

「いや、日本の建築物はこの程度じゃ崩れないから。ほら、大丈夫だからそこから出ておいで」


 外国だと地震はそんなにないんだもんな。地震大国日本の国民は地震慣れしちゃってるから、この程度だと騒がないもん。きっとニュースでも速報が流れるくらいだろう。外人との差がまさかこんなところで見れようとは。早朝でなければ笑っていただろう。

 僕が手を差し伸べると、周りを警戒しながらその手に捕まり、恐る恐る這い出てくる。

 

「……ホントに大丈夫?」

「大丈夫だって。とりあえず彩奈が寝てるから、起こさないように僕の部屋に行こう」


 布団を被ったまま付いてくるフラン。廊下に出ても両親は起きてくる気配すら感じさせない。よく寝ている彩奈。ウチの家族はどうなってるんだ?

 僕の部屋へと来ると、フランをベッドに座らせて、僕はフランが落ち着くまで隣に座ることにした。


「オー。地震は怖いヨ危ないヨ」

「大丈夫だって。もう揺れてないし」

「ナンデそんなに大丈夫?」

「日本は地震が多い国だしさ、割と地震も頻繁にあるんだよね」

「あの津波とかいっぱい来た地震みたいのダッタらどうするの!」

「どうするのって言われても……」


 たしかにあれクラスの地震だと危ないかもしれないけど、それでも地震慣れしてしまってるせいもあってか、どこか緊張感は無い。家族が寝たままって言うせいもあるかもしれないけど、外を見ても誰も外に出ていないことから、『ただの大きな地震』だってことがわかる。まぁフランからしてみたら『ただの大きな地震』っていうのが問題なんだろうけど。


「ハァ。浩二はどうしてそんなに落ち着いているのかワカラナイヨ」

「僕より落ち着いてる人はこの家の中にまだいるけどね」


 落ち着いたのか、フランが僕の肩にコテンと頭を乗せてきた。

 特に放すわけでもなく、話すわけでもなく、フランが落ち着くならいいかと思ってそのままにしておいた。


「……スースー」

「え?」


 そのままフランが寝た。落ち着いたのか騒ぎ過ぎたのか知らないけど、さっきの言葉を最後に寝た。

 僕は小さくため息をつき、寝息を立てているフランをそっと横に倒し、僕のベッドに寝かせた。


「まったく……」


 騒がしいんだかマイペースなんだか。

 僕はフランのせいで眠気が覚めてしまったので、仕方なしに読みかけの小説を読むことにした。


「…………」


 しかしまだ薄暗いため字が読めず、フランが寝ているところで電気をつけるわけにもいかないので、仕方なしの仕方なしに階段を下りてリビングへと向かい、ソファに座って小説を広げた。

 ……せっかくだし、お湯を沸かしてインスタントコーヒーでも作るか。

 僕はそう決めると、キッチンでカチャカチャと準備を始めた。

 今日はいい読書日和になりそうな気がした。

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