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ケイドロ大会

「俺はポリスアンドシーフに参加する」

「じゃあ私は看護師になる!」

「俺は警察官! って違うわ!」


なにこのノリ。ついて行きたくない。


「で、ケイドロ大会がどうかしたんですか?」

「なんだ。知っていたのか。さすが情報班は情報の仕入れ方の質が違うな」

「意味がわかりません」


ケイドロ大会。

このうろな町のそのへんを歩いていると偶然とは言えない確率で出会うことのできる天狗さんと中学校が合同で計画した大会があるらしい。

でもなんで天狗+中学校=ケイドロなのかはわからない。天狗のみぞしる。でもそれを合同企画として決定した中学校側は何を考えているのか。

きっと酔った席で決めてしまったんだろう。酒は口約束を簡単に結べる魔法の飲み物だしね。

それに先輩は参加するらしい。


「というわけで、高城と綾瀬の分も参加希望を出しておいてやったぞ」

「「余計なことをすんなや!!」」

「ひぃっ!」


同時に声をあげた部長と目が合う。

…意見が合ってしまった。

これはマズイ。思考回路が似てきたということなのだろうか。

こちらを見ている部長がニヤリと笑った。なんかむかつく。


「君もこの部活に馴染んできたようではないか。ようやく私の作戦が効いてきたようだな」

「さすが嘘八百アンスピークブレイカー。実は俺もいろいろと仕掛けておいたのだ」


さっきめちゃくちゃビビってたくせに、何事もなかったかのように入ってくる先輩。謎メンタル。


「私はケイドロ大会には参加したくない」

「なぜだ、同胞よ?」

「疲れるからだ」


急に正論。


「ふふふ。無駄な魔力を使いたくないというわけか」

「単純に疲れるからだ」

「わかっているぞブラザー。それもいつもの能力だ、ろ…?」


香月先輩の顔を、死んだ魚に包丁を突き立てるような目で見つめる部長。

そのあまりにもマジな目で見られた先輩は言葉につまった。

いつも嘘をついているくせに、急に真面目になるあたり、よほど嫌なんだということがわかる。

先輩はもう泣きそうだし。


「部長、そんなに嫌なんですか?」

「嫌なわけではない。運動は苦手なのだ」


嘘をつかないということは、本当らしい。変な言い方だけど。

ふと視線を感じた。

先輩が捨て犬のような眼差しで僕を見てくる。

『奴を説得してくれ』

そう捉えた。

僕は親指と人差し指で円を作り先輩に合図を送る。

『金』

理解して驚いたのか、先輩は真剣に悩み始めた。

そしてジェスチャーで返してくる。

『OK』

交渉成立。


「部長、僕は参加しますよ」

「本気で言ってるのか?」

「もちろんです。クソみたいな先輩が勝手に参加させたわけですけど、断るのもなんですし、日頃の運動不足を解消するのもいいじゃないですか」

「だがしかし…」

「じゃあ部長は来なくてもいいですよ。二人で行ってきますから。でも部長と話し合わないのは残念だなぁ。先輩としか話合わないし。マジで辛いな。まぁ仕方ないか」


嫌味と挑発を同時にこなす。

これで先輩へのいやがらせもでき、部長のぼっちフラグを立てることができる。一石二鳥だ。

先輩は言い返せないだろうけど、部長はなんやかんやで楽しいこと好きだ。きっと部室で自分が知らない話を延々とされるのは堪らないだろう。


「わ、わかった。私も行こう。部長として行かざるをえ、得ないだろう。文芸部として参加してやろうではないか」

「ほ、ホントか友よ!」

「まぁ私は警察側になってダラダラと追いかけてやる。ククク。参加もできて動かなくてもいい。完璧なプランだ」


脳内でイメトレをしているのか、ブツブツと言っている部長。キャラ崩壊である、

先輩は先輩で何やら盛り上がっている。

僕は二人の保護者として行くしかないだろう。


「あ、先輩。約束のブツを」

「あぁそうだったな。ちょっと待っていろ!」


そう言って部室を飛び出していく先輩。

数分後。


「これで勘弁してくれ!」


そう言って僕に紙パックのジュースを投げてきた。


「……」


僕はもらった寒天蒟蒻のぶどう味を力強く吸いながら読書に励んだ。



部長にとっては残念だったのか、ケイドロ大会は僕が警察側で、部長と先輩が泥棒役だった。

ケイドロ大会の内容は、三衣千月さんの天狗の仮面の秘密の8話にて描かれています。

町長も出ますよー。

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